探偵Lの映画ブログ

カナダ在住の映画&ドラマオタクが探偵気分で映画をレビューするブログ

Netflix『ラブ・ハード』オンライン恋活中の男女に贈る。心温まるクリスマス映画。

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もうホリデイ映画!?とも思ったけど、『シリコンバレー』のジアン・ヤン役が最高だったジミー・O・ヤンが主演のラブストーリーというところに興味があり、しかもカナダでは初登場後すでに1位だったことから、早速観てみました。

 

ネトフリのクリスマス映画は当たり外れが激しいから、あんまり期待はせずに観始めたのだけど、コメディとして面白いし、主人公ナタリー役のニーナ・ドブレフがスタイル抜群でかわいいし、何よりストーリーが染みる!!

 

最後はちょっと涙ぐんでしまいました。

 

オンライン恋活の葛藤と、コンプレックスを抱えながらも恋がしたいキャラクター達の純粋な想いに心温まるラブコメディです。

 

 

ストーリー・あらすじ

LAで自身の冴えないオンライン恋活事情を執筆しているライター・ナタリー【ニーナ・ドブレフ】は、ついにアプリで理想の男性ジョシュに出会う。

クリスマス、彼にサプライズするために東海岸の彼の自宅を訪れるが…

 

 

キャスト

ナタリー【ニーナ・ドブレフ】

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アプリデートの失敗談を記事にするLAのライター。

 

美人なのに、なかなかいい相手に出会えないナタリーにぴったりだったと思う。ジョシュとのコントラストもかわいかった。

トロント出身のカナダ人女優さん。相変わらず笑顔が可愛らしいニーナ。スタイルも抜群!!

 

出演作:『ヴァンパイア・ダイアリーズ』など

 

ジョシュ【ジミー・O・ヤン】

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出会い系アプリで人気者の友人の写真を使い”なりすまし”でナタリーに出会う。

 

最初の登場シーンから爆笑!冴えないオタク系男子だけど、心優しく家族想いないいヤツ。

ジミーはふざけたコメディキャラのイメージが強くて恋愛映画に出るイメージはなかったけど、愛らしいジョシュのキャラクターにぴったりだった!

ちなみに彼のコメディショーはAmazonプライムで見れますよー。YouTubeもやってるし。

www.youtube.com

 

出演作:『シリコンバレー』、『クレイジー・リッチ!』など

 

タグ【ダレン・バーネット】

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ジョシュの友人で、アウトドアやスポーツが大好きな肉体派男子。

 

Netflixオリジナル『私の”初めて”日記』で人気が出た日系クォーターのイケメン俳優!

実は、今作に出演しているジョシュの兄オーウェンの恋人チェルシー役ミカエラ・フバーと交際中!!

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(この二人!!)

 

出演作:『私の”初めて”日記』など

 

 

感想【ネタバレあり】

豪華キャスト

メインキャストから脇役まで、ここ数年の話題作に出演する人気俳優が揃っています。

とにかくイケメンなダレン・バーネットから、ジョシュの兄役ハリー・シャム・Jrジェームズ・サイトウまで。

 

個人的には、とにかく目立ちたがりな兄オーウェンを演じたハリー・シャム・Jrの、ここまでぶっ飛んだ演技を見るのは初めてだったから意外で面白かった!

この人タイプなんだよなー。『glee/グリー』にも出ていただけあって、クリスマスキャロルの歌とダンスのシーンはキレッキレ。笑

 

そして、今までなぜかティーン役が多かったダレン・バーネットが、実際の年齢30歳でラブコメに登場しています。

タグはイケメンなだけであんまりキャラクターに存在感がなかったかも。最後、ナタリーにも騙されて、一番かわいそうな立場だったのは彼かも…

 

LAから来ているナタリーと、ジョシュ達が住むニューヨーク州郊外のライフスタイルのコントラストを表現するシーンも多くて笑えた!

アメリカは東海岸と西海岸じゃカルチャーがかなり違うの面白いよね。

 

 

オンラインデート事情

出会い系のアプリを使うことが普通になっている今、ネットの出会いはまず写真の雰囲気で判断しなきゃいけないから、やはり見た目が重要

逆に言えば、アプリの仕組み上、どんなに趣味や気の合う相手がいたとしても、第一印象(顔)がタイプじゃなければ知らないうちに左スワイプしてる可能性も大いにあるはず。

 

そもそも美人で「選ぶ側」のナタリーにとってはまともな男性に出会うことが難しく感じるかもしれないけど、外見に自信がなく、そもそもアプリでほとんどマッチングしないジョシュのような人には、自分の良さを知ってもらう機会もない…

 

そんなジョシュに感情移入してしまう人が多いはず。

 

だんだんと心を開き、正直に自分のコンプレックスを語るジョシュに、わたしもすっかり共感。観ているうちにベイビーフェイスな彼がすごく愛しく見えてくる。笑

てか、ジミー・O・ヤンの肌が美しすぎて嫉妬。笑

 

 

クリスマス映画として

ジョシュの家のクリスマスデコレーションが最高!彼の家のインテリアも最高!それだけでクリスマス感。でも、何より兄オーウェンのクリスマスセーター姿に一番クリスマスを感じた。笑

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とにかく、リン家の家族みんながいいキャラ。兄はうざいけど…素敵な家族だわー。

 

みんなでジンジャーブレッドハウスを作る伝統があったり、めちゃ大きなツリーを一緒に飾りつけたり、老人ホームにクルスマスソングを歌いに行ったり、微笑ましい仲良し家族。

 

いちばんのお気に入りクリスマスシーンは、ナタリーとジョシュの”Baby It's Cold Outside”の替え歌。笑

近年、この歌は”セクハラソング”として有名になってるけど、やはりクラシックなクリスマスソングとしては相変わらず人気。でも、それをうまく替え歌にして可愛く歌い上げる二人(というかジョシュ)がとにかくキュート!

 

しかも、その後注目を浴びようと子供ができたことを発表する兄に負けじと、ナタリーに無理なプロポーズを仕掛けるジョシュも最高。笑

何この兄弟。笑

 

 

ラストが!!

ジョシュとナタリーの出会いの会話は、お気に入りのクリスマス映画について。

ジョシュのお気に入り映画『ラブ・アクチュアリー』。(ちなみにナタリーのは『ダイ・ハード』。笑)

 

ラストで、それを知っているナタリーが、有名なメッセージボードのシーンを再現してジョシュに告白するシーンは泣ける!!素敵!!

 

勝手な予想では、ジョシュが頑張ってナタリーを仕留めるのか!?と思いきや、ナタリーがジョシュの本質に気付き、自分に必要なのはイケメンで何の共通点も無いタグよりも、性格が自分にぴったりのジョシュが正しい相手だと気づくって言う、素敵なラスト。

 

映画好きとしては、こう言う他の映画からのカメオみたいなのも面白くて好き!

 

 

まとめ

あんまり期待していなかったけど、最終的にかなり好きなタイプの作品でした。

正反対のように見える二人だけど、実は内面的な共通点はたくさんあって、結局中身が重要なんだと思える、とにかくかわいい映画だったなー。

 

ただ、現実にはこんなことまず無い!ありえない!

そもそも、”なりすまし”された初対面の男の家でクリスマスを過ごそうって言うのがありえないし、その相手がジョシュのようないいヤツだとも限らないしね。

ただ、本当にいい相手ならこうやってお互いを知る時間があるといいよねって言う。

 

オンラインデートの経験はないけど、オンライン婚活を長年続けていた友達の話を聞いてると、アプリでの出会いやらデートやらは、便利そうに見えて色々と難しいみたいね。

ナタリーの記事の読者と同様、失敗談を面白おかしく聞いているのは楽しいんだけどね。笑

 

ジョシュのように、なかなかマッチしないような人も、ナタリーのように、マッチしては騙されるような人も、この映画で気付くできることがいくつかあるはず。

 

今は、ネット上では画像の加工やウソの経歴で人を騙すことが簡単な時代だからこそ、最終的に”自分に合った相手”に出会うためには、まずは正直に偽りのない姿を曝け出すことも重要なんでしょう。

 

これは久々に最後まで飽きずに観れたネトフリのクリスマス映画でした!

おすすめ!!

映画『DUNE/デューン 砂の惑星』賛否両論!?キャストが話題の80年代SF映画リメイク。

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お久しぶりです!

最近色々と見てはいたんですが、レビューを書く気になるような作品に出会えませんでした。

 

正直、観賞前はあまりワクワクしていなかった今作。でも、SFは大好きだし、シリーズ化するらしいという噂を聞いたため、念の為観てみることに。

ストーリー・雰囲気ともに、スターウォーズ系かと思いきや、特殊なスパイスが採れる砂の惑星デューンを取り巻く政治的な画策もあったりして、ゲーム・オブ・スローンズ的な作品だったかも。

 

デューンはまさに、かつてのアメリカみたいな状況。

搾取される先住民族(フレメン)と、利益のために侵略・占領を進めるヨーロッパ諸国(宇宙帝国の貴族たち)的な。

西暦1万年でもこんななのかー、人間って学ばないのね…

 

ティモシー・シャラメ&ゼンデイヤのダブル主演ということもあり、若手激アツ俳優たちの共演に映画ファンはざわざわしていたのでは。

でも、ダブル主演という割にゼンデイヤはシーンもセリフも少ないので、ファンとしてはちょっとがっかり。(むしろレベッカ・ファーガソンだろ!と。)

 

監督は、カナダのケベック出身『ブレードランナー2049』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督

『ブレードランナー2049』最高だったから今作の無機質で近未来的な雰囲気も納得。

 

作品としては155分とかなり長いけど、ストーリー的には今作は序章。

次回作は2023年(結構先)に公開が決まりました!

これからの展開に期待!!

 

 

あらすじ

デューンと呼ばれる砂の惑星で採取される特別なスパイスをめぐり、全宇宙がその支配権を狙っていた。

アトレイデス家の公爵は、デューンの管理とスパイスの採取を任されるが、そこには陰謀が仕組まれていた。

 

 

 

キャスト

ポール【ティモシー・シャラメ】

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アトレイデス家の後継者。

未来を見る能力があり、デューンやチャニ【ゼンデイヤ】のことを夢で見ている。

 

実は初ティモシー・シャラメ。

レッドカーペットとかのインタビューで、どこにでもいそうな若者みたいにヘラヘラと喋る(彼の喋り方よくコメディ番組でモノマネされてる笑)姿しか知らなかったので、今作での演技を観てイメージ変わった!憂いのあるプリンス感がぴったり!

 

ジェシカ【レベッカ・ファーガソン】

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ポールの母親だが、公爵夫人ではない。

秘密結社ベネ・ゲゼリットの出身で言葉で人を操る力を持ち、息子にも受け継いでいる。

 

こんな若い美女がお母さんなの?ていうのがまず第一印象。息子といい感じになっちゃうんじゃないかとハラハラしてしまった。笑

このお母さんは今後ストーリーが進むにつれて色々と関係が複雑になっていきそうな予感…

 

レト・アトレイデス公爵【 オスカー・アイザック】

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アトレイデス家の公爵。

宇宙帝国よりデューンの管理権を任され、家族を連れて移住することに。

 

スターウォーズのイメージとは打って変わって、今回はロイヤルファミリーなオスカー・アイザック。

大きな力を持つハルコンネン家の陰謀にまんまと巻き込まれてしまう色々かわいそうな公爵。

 

チャニ【ゼンデイヤ】

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ポールの夢に出てくるフレマンの女性。

 

ほぼスローモーション&セリフなしの登場だったゼンデイヤ。プロモーションではいつもティモシーとのペアだったから、もっと登場シーン多いと思ってたのにー!

でも、重要な役どころなのは間違い無いから今後に期待。

 

ハルコンネン男爵【ステラン・スカルスガルド】

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ハルコンネン家の男爵。

甥【デイヴ・バティスタ】とともにアトレイデス家の撲滅とデューンの占領を目論む。

 

好きなだけ食べて好きなことばっかりしてそうなわがままボディの金持ち男爵。

自分で体が動かせないからか、背骨がマシンになっていてちょっとすごい。笑

 

 

感想【後半ネタバレあり】

80年代のオリジナル作品は見ていないので、ストーリーもすべて初見での感想です!

 

終始、ゲームオブスローンを彷彿とさせる雰囲気(でもそこまでちみどろではない)。

SFというよりは、権力闘争と政治がテーマな大人の映画。

 

まず、真っ先に思ったのは…

超未来SF映画のメインキャラの名前が【ポール】と【ジェシカ】…パッとしないなー。と笑

でも、ロイヤルファミリーだし、伝統を重んじるみたいなことなのかも…?(原作はめちゃ古いし。)

 

そんなことはさておき…

 

映像、衣装、武器、建物のデザインなどなど、全部がカッコ良くてスタイリッシュで新しい!

特に、戦闘シーンで戦士たちが銃のような武器を使わないところが、個人的にはすごく良かったと思う。

銃のような武器を近未来的に使うとスターウォーズみたいになっちゃうことを理解して、あえて使わなかったんだろな。

 

ケベック州出身のカナダ人監督ってだけでも個人的には嬉しいけど、彼のどこか冷たく未気質な雰囲気が、デューンの世界観にマッチしてた。

今時な出演者が多いからってちょっと敬遠していたけど、重厚な雰囲気とミステリアスな世界観で、SF映画が苦手な人でも楽しめる作品だと思います。

 

ポールとジェシカが使う”ヴォイス”と言う特別なパワー、デューンに住む先住民フレマン、あらゆる権力闘争が面白くなりそう。

2023年の公開が待ち遠しい!!

 

 

ーーーここからネタバレありーーー

 

 

テレビやネットでティモシーとゼンデイヤが二人でプロモーションしてたから、てっきりダブル主演なのかと思いきや、実際のゼンデイヤの出演時間の短さにはちょっとぼったくられた気分。笑

セリフなしのスローモーションシーンばっかり。でも、今後のストーリーに重要なキャラクターなんだろうな。

 

実際のメインキャラだったポールの母ジェシカについては、公爵夫人かと思いきや、公爵とは未婚!

これには政治的な理由がありそう。ジェシカは秘密結社のベネ・ゲゼリットの人間だし。

今後、そこが絶対にストーリーのキーになってくるはず。女性にしか引き継がれるべきじゃない”ヴォイス”のパワーをポールが使えるようになることで、デューンをめぐる権力闘争にも影響が出そう…

 

フレマンについては、今作ではそこまで詳しく語られないけど、マーベルのワカンダ的な秘密を持っているんだろうな。ポールが夢の中で青い目をしていたり、実はフレマンと何かしらの血縁関係があるのかも。それか、フレマンは肉体改造をしてデューンの気候にアダプトしているのかも。

謎がいっぱい!!

 

最後、みんなが恐れるサンドワームをフレマンが移動用に乗りこなしていて、「やはり。」と納得してしまった。カインズ博士が逃げようとした(殺されちゃったけど)とき、そんな気がしたのよ!

 

ジェイソン・モモアが、デューンとアトレイデス家との架け橋をするんだけど、彼の髭がどんどん短くなっていって、最後はほとんど別人に。髭がないほうがハワイアンぽい!

メインキャラとして活躍するのかと思いきや、名誉の死を遂げるところが切なかったなー。

 

そしてそして、ユエ博士【チャン・チェン】の裏切りにはびっくり。

ユエ博士、最初の登場時にポールと中国語喋るシーンがなんかカッコよくて素敵。笑

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ダンカン【ジェイソン・モモア】か、スフィル・ハワト【スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン】(この人怪しかったのにー)が裏切るかも、と思ってたけど、そこか!と。

 

おデブな男爵、毎回相手の言葉を都合よく解釈して裏切るから、ユエ博士も死んじゃうんだろなーと思ったけど…やはり。

でも、レト・アトレイデス公爵に毒を仕掛けたことで復習できたのかも。あの毒の効力凄すぎ!!笑

ハラハラと倒れていく大臣?たち。男爵はしっかり生き延びてたけど。

 

そういえば、男爵の甥【デイヴ・バティスタ】が、もうそのまま『ガーディアンズ オブ ギャラクシー』のドラックスにしか見えなかった。笑

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ハルコンネン家は、まさに『ロードオブザリング』と『スターウォーズ』のヴィランを足して割ったような気味の悪い一族。

でも、彼らの狙いと男爵の活躍が今後楽しみ!

 

 

今回は「序章」だとして、今後の惑星同士の政治的策略が個人的には楽しみ!

公開前に原作が読みたくなりました。

【事実と比較】『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』モデルになった事件について詳細解説。当事者たちのその後は?

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わたし普段ホラーは観ないのですが「実話」と言われると興味が恐怖を上回ってしまうのです。笑

こんなことが本当にどこかで起きたのであれば、その背景が知りたい!!

 

もちろん、映画はホラー要素にフォーカスしており、実際に話題になった裁判や判決については詳しく語られないので、あえてそこにフォーカスしてモデルになった事件について掘り下げてみました。

 

追記:
2023年10月に、この事件のNetflixドキュメンタリー『トゥルーホラー 悪魔が私に殺させた』が公開。観ましたよ。この事件自体の主人公は、アルネ本人よりも、デビーの家族なんだなと。

 

ドキュメンタリー鑑賞、そしてその監督のインタビューを聞いてから、この事件の見方が大きく変わったし、追加情報もあるので以下の内容もちょっと訂正しています。(新情報もブルーで追加済み)

 

ドキュメンタリーの監督は、この事件に関わってドキュメンタリーに参加した誰もが彼らなりの真実を信じ、語っていると言っていました。

けど、ウォーレン夫妻とアルネはこの事件を機にキャリアが好転し、ある意味大成功した一方で、最初に”悪魔に取り憑かれた”デヴィッドの家族は、関係が壊れバラバラになってしまっていることから、なんとも悲しい事件であることが改めてわかります。

 

この映画を観た人には、ぜひドキュメンタリーも見てほしい!! 

 

2021年10月1日に公開した『死霊館』シリーズの最新作。

ホラー界の鬼才ジェームズ・ワンがプロデューサーを務め、ビリー・アイリッシュの"Bury a Friend"PVや『ラ・ヨローナ〜泣く女〜』のマイケル・チャベスが監督を手掛けた今作。

 

今作は、知人を殺害した青年が悪魔に取り憑かれたことを犯行の理由として訴えた実在の事件を題材にしています。

 

原題は”The devil me deme do it(悪魔が私にやらせた)”だけど、 邦題『悪魔のせいなら、無罪』って、タイトルでネタバレしてんじゃん!!てなった。笑

youtu.be

 

 

事件概要

1980年、11歳の息子デヴィッド・グラツェルに悪魔が取り憑いていると信じたグラツェル家は、ウォーレン夫妻に助けを求める。

ウォーレン夫妻は司祭たちと共にエクソシズム(悪魔祓いの儀式)を行うが、数日間続いた儀式の間にデヴィッドに取り憑いた悪魔が、デヴィッドの姉の恋人アルネ・ジョンソンに憑依してしまう。

数ヶ月後、アルネは大家のアラン・ボーノ(映画内の名前はブルーノ)を口論の末殺害してしまう。アルネの弁護士は「悪魔の憑依」を主張した。

 

実際の事件の経緯

1.デヴィッドの悪魔体験

1980年のウィスコンシン州、グラツェル家は最近婚約した娘の新居の掃除に訪れたところ、11歳の息子デヴィッド・グラツェルが心霊体験をする。それを機に、デヴィッドに悪魔が憑依したと思われる。

 

デヴィッドは、家の中で老人男性を見たと言っており、男性はデヴィッドに「気を付けろ」と言うや、主寝室にあったウォーターベッドに押しつけられたと語った。

その後、デヴィッドは夢でうなされたり、体に見覚えのない傷ができたりし始めたため、両親はウォーレン夫妻に相談した。

 

ウォーレン夫妻はその件を深刻に受け止め、カトリック教会に相談。6人の神父と共に悪魔払いを行うことになる。その結果、彼らは43の悪魔が憑依していることを知った。

 

2.アラン・ボーノの殺害

1981年2月、ブルックフィールドでアラン・ボーノ40歳が、飲酒中の乱闘により死亡。

5インチ(約13cm)のナイフ22回も刺されており、そのうち4〜5つは致命傷だった。

 

容疑者は19歳のアルネ・ジョンソン

アルネは事件現場から3キロほど離れたところで逮捕された。彼は逮捕時、事件のことを一切覚えていないと言っていた。

 

その日、犬舎にはアルネの恋人デビー・グラッツェル、デビーの従兄弟で9歳のマリー、アルネの妹ワンダが一緒だった。アランはデビーが働いていた犬舎の管理人でアルネの友人であり大家だった。

 

酔ったアランがマリーの腕を掴んで離さなかったのでアルネが仲介に入ったが、急に動物のような唸り声を出し持っていたナイフでアランを刺し始めたとデビーは語っている。

 

【映画との違い】

*アランが絡んだのは恋人ではなくアランの妹だった

 

3.アルネの変化

恋人のデビーは、事件の1ヶ月ほど前からアルネの様子がおかしくなったと言っていた。

 

本人は一切記憶がなかったが、時折唸り声をあげたりトランス状態に陥ったりすることがあ理、デビーは、その様子が1980年に悪魔に憑依されていた弟のデヴィッドと同様のものだったと言っていた。

 

4.裁判

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アルネ・ジョンソン

ボーノの殺人事件の裁判は1981年10月に始まった。

アルネの弁護を担当したのは33歳の弁護士マーティン・ミネラ

彼は、悪魔の憑依を犯行の理由にしたことについてはウォーレン夫婦からの助言があったからだと語り、「被害者が受けた傷には人間には残すのが不可能なほど深いものがあり、ウォーレン夫妻に悪魔憑依中は本人に意識がないことを聞いてから、そのことを考えずにいられない。」と言っている。

(映画内では、悪魔を信じない女性弁護士がウォーレン夫妻の説得により一瞬で悪魔のせいだと心変わりしています。)

 

ミネラ弁護士は法廷で「裁判所は神の存在を扱ってきたが、今度は悪霊の存在を問われることになるだろう」と語るも、ロバート・キャラハン判事は「無関係で非科学的」としてその主張を即座に却下。

 

それを受けてミネラ弁護士は正当防衛を主張。そのため、陪審員は悪魔払いやデヴィッドの憑依との関係についても一切聞かされずに裁判に臨んだ。

 

5.目撃証言

目撃者の証言によると、事件前アランとアルネの二人はかなり酔っていたと言う。

「3時間の間に13〜15杯のワインを飲んでいた」との証言もあり。

 

事件後に駆けつけた救急隊員は、アルネの恋人デビーが「パパ、アルネにそのつもりはなかったの。彼がお酒を飲むとどうなるか知ってるでしょ。」と話しているのを聞いたと証言している。

 

6.判決

1981年11月、陪審員の15時間にわたる審議ののち、アルネは第一級傷害致死罪で10〜20年の懲役を言い渡される。

(22回も刺してるのに殺人罪じゃないんだ…)

 

しかし、模範囚であったことからわずか5年で釈放

デビーとアルネは1984年(服役中)に結婚。

 

悪魔の憑依か、殺人か?

アルネ

アルネについて、映画内では「物腰柔らかで心優しい若者が悪魔の憑依で豹変してしまった!」みたいに描かれてるけど、実はアルネをよく知る人は「怒りっぽく、女性への独占欲が強い」、「かつて働いていたツリーサービスで、口論のあと小さなぬいぐるみをナイフでズタズタにしたことがある」とも言っていたそう…

 

また、アラン・ボーノ殺害時にはボーノ、アルネ共にかなり酔っ払っていたらしく、その日アルネがステレオの修理を頼まれていたが、その支払いについて意見の不一致があったとも言われている。

映画内では、友人を殺害後のアルネが朦朧としながら道を歩いているところを警官に見つかっていますが、実際にアルネが見つかったのは…近所のパブ

 

追記:
・デビーとアランは元恋人同士だった。アルネは二人の関係を怪しんでいたこともあり、アランを殺す動機になりえた。

・これは個人的な意見だけど、犯罪者はよく「何も覚えていない」「事件当時の記憶がない」「頭が真っ白になっていた」なんて言うけど、アルネも全く同じこと言ってるのでは、、

 

疑問視される警察の力量

この事件は、地元警察の記録上ブルックフィールドで起きた初の殺人事件。

警察や捜査官も殺人事件についての経験は浅く(おそらくゼロ)、しかも容疑者と思われる人間が「悪魔の憑依」みたいなぶっ飛んだことを犯行理由に反論してきたら、そりゃ困惑したでしょうよ。

経験不足によって捜査が雑でお粗末になっていたとしても全くおかしくないと思う。

 

この事件が起きたのは、ちょうどアメリカ中が「悪魔パニック」と呼ばれる悪魔憑依ブームの真っ只中にいた80年代。ウィスコンシンの田舎町で弁護士が「悪魔の憑依」を犯行理由に訴えたこの事件の噂を聞くと、ワシントンポストやニューヨークタイムズなどの大手メディアまで、すぐに飛びついたそう。

しかも当時、世間は悪魔をまともに信じていろんな悪行(子供の非行とか)を悪魔のせいにして、それをお祓いするテレビ番組や本も大人気になっていたから、関わった人間が世間の風潮の影響を受けていた可能性も高いはず。

 

裁判の最中も、ウォーレン夫妻はこの事件を題材に映画や本を出版する準備があるとメディアで発言しており、1983年にはジェラルド・ブリットルと『デビル・イン・コネチカット』を出版。

 

当事者たちのその後…

現在でも、アルネとデビーは夫婦として暮らしています。

 

アルネの当時の恋人デビーには実は2人の弟がおり、もう一人の弟カールはのちに「ウォーレン夫妻は、デヴィッドの不安定な精神状態を利用してお金儲けに使った。家族の不幸を利用して搾取した。」と主張。

実際、悪魔払いを受けたデヴィッドはメディアに追い回され、家族の評判に影響も大きな影響が出ていたそう。

 

追記:
・弟二人とも身近で異常な行動を目撃していた。

・デヴィッド達の父と長兄カール(当時15歳)は、悪魔の憑依ではなくデヴィッドの精神的な問題だと思っていた。錯乱状態の息子を見て痺れを切らした父が「いい加減にしろ!」とデヴィッドに掴みかかると、すぐにおとなしくなったこともあったそう。

 

デヴィッドとカールは、2007年にウォーレン夫妻、ジェラルド・ブリットル、出版社を訴えました。(本の再出版を受けて)

家族は、この収益でアルネを刑務所から出すことができると説得されており、実際にアルネと出版側は1億円以上の報酬を得ました。

本は100時間にのぼるブリットル家のインタビューで構成されており、本の成功を受けて一家も報酬を得ていましたが、その額はたった2000ドル(約20万円)。これじゃ納得いかないのわかる…

この裁判は2021年時点でまだ決着がついていないよう…

 

追記:
・カールによると、母は家族の食事に睡眠薬を入れていたらしく、その薬の副作用に幻覚等が含まれていたことから、デヴィッドの悪魔憑依は薬の影響なのではとも考えている。

・現在、兄弟三人はこの事件への考えの不一致やトラブルを受けてバラバラになってしまったそう。(デビーは最近亡くなった。)

 

アルネとデビー夫婦は、今でもウォレン夫妻の言い分をサポートしています。そりゃそうだよなー。

 

追記:
・デビーは最近亡くなった。

 

まとめ

この事件について、時代背景(悪魔ブーム&ウォーレン夫妻の活躍が認められ始めた時期)がわかると、これが本当に悪魔憑依だったのか、弁護士とウォーレン夫妻の思いつきだったのか、少し疑問あり

会え畝を担当した弁護士も、若くて野心にあふれていただろうから、この事件でキャリアをブーストしてやろうくらいに思っていたんじゃないかと。

 

もし、仮に、アルネが故意に殺人を犯していなかったとしても…服役5年は短過ぎると思う。

この映画でもそうだけど、被害者アラン・ボーノについてはほとんどフォーカスされず、殺人犯アルネがひたすら「いい人」みたいな立ち位置なのにはちょっと疑問あり。

 

この事件、本や映画、メディアの注目で得をしたのはアルネとウォーレン夫妻。

お互いの立場を守ために都合の良いビジネスパートナーだったのかもしれないけど、せめて被害者にも印税とか渡ってて欲しいなぁ。どうなんでしょ。

 

映画としては面白かった。

最後はびっくりするどんでん返しで怖かったー。カメラワークもハラハラドキドキで大満足!

ウォーレン夫妻の仲の良さと絆を感じるストーリーも良かった。

アルネ以外の、二人の女性の死は(一部)実話だけど、悪魔崇拝の女性についてはフィクションらしいです。

 

ホラー苦手だけど、死霊館シリーズは今後も見ちゃうだろうなー。