探偵Lの映画ブログ

カナダ在住の映画&ドラマオタクが探偵気分で映画をレビューするブログ

Netflix『ボクらを見る目』アメリカで生きる黒人達への偏見が浮き彫りになった実話

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#blacklivesmatter 運動の加熱によって再注目されている今作。

『13 TH』などの話題作を手掛けた、女性監督で人権活動家のエイヴァ・デュヴァーネイ監督の作品。実際に起きたニューヨークの冤罪事件を元にした作品で、この事件は当時も黒人少年への偏見が産んだ冤罪として非常に話題になった事件です。

 

 

黒人少年とその家族の目線で描かれた今作、涙無しには観れない衝撃作。アメリカで黒人として生きることが、どれだけ不遇で悲惨にになり得るかっていうことが分かる超良作。

メインキャラ達を演じた子役&若手俳優の演技も秀逸!

 


監督エイヴァ・デュヴァーネイの作品は、黒人の人権問題に着目したものが多いけど、作品としてよく出来ているものばかり。当作品でも黒人文化を象徴するような選曲が印象的でした。

冤罪をテーマにしたこちらののドキュメンタリーもオススメ↓↓

mobayuri.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

ストーリー

1989年、ニューヨーク・セントラルパークで強姦事件が起きる。

同時刻に同じセントラルパークで遊んでいた当時14〜16歳の少年たち5人が、確実な証拠が無いまま容疑者として逮捕。のちに5人全員の無実が判明した。

容疑者は黒人4人とヒスパニック系1人で、人種差別と偏見による不当な尋問・逮捕だと批判を受けた。

 

 

〜ここからネタバレあり〜

 

 

 

 

感想【ネタバレあり】

当時のニューヨークで、色々問題は抱えながらも青春を楽しんでいたティーンエイジャー達が、運悪く泥沼にハマっていく話。

 それにしても、人種のステレオタイプで勝手に判断されてしまうことの恐ろしさよ。これ観る前に『13 TH』を観てたから、黒人と警察の力関係やら黒人のイメージの固定観念が現実社会で全部悪く働いてしまった例みたいな時間だったと思う。

 

内気な14歳の少年が強姦の加害者にされるなんて、普通に考えたら違和感あるはずなのに、警察は黒人を野蛮で常識も無い別の生き物としてみているからこそ疑いを持たなかったんだって思った。相手を同じ人間だと思ってたらもっと冷静に判断していたはず。 複数人の犯行だし、本当に関わっていたなら被害者か犯人に絶対なんらかの証拠が残ってるはずなのに、黒人への偏見や捜査官の感情が先走りして「誰かを逮捕」することに必死になってしまったんだろう。

(アメリカの人種差別系事件て、大体証拠無いのに捕まってるよね。警察は何がしたいんだろうか。)

同じ言葉を喋って、同じ学校に通って、同じコミュニティで生活しているのに、人種への固定観念がこれほどまで強く寝ついているのって本当に恐ろしい。 

 

この作品で、黒人家族が実際に人一倍気を付けて子供をしつけてるってこともよく分かった。どうしても悪目立ちしてしまうからこそ、とにかく悪い子とはつるまないように、警察とは関わらないように。必死な親の姿も感動的。

特に前科持ちのお父さんなんか、自分の経験と重ね合わせてさらに追い込まれてしまって、結果親子関係が崩壊してしまう。

やるせ無いことばかりのこの事件が、その後の人生にまで影響してしまうことが辛かった。

 

この作品、まずは主人公達の演技素晴らしい。

無実の少年達の戸惑いと恐れがすごく伝わってきて、罪を着せられる尋問のシーンとかおいおいと泣いてしまった。笑

特に、コーリーの成人向け刑務所での生活は悲惨すぎる。でも、偶然に真犯人と同じ刑務所にいて対面してたとはなんとも皮肉。彼らの出会いがなければ真犯人は申し出てなかったかもね。真犯人がもし名乗り出てなかったらコーリーはどうなってたか分からないわ。

 

政治的な批判もしっかりありながら、ちゃんと作品として面白い。

(エイヴァ・デュヴァーネイの作品はトランプ批判的なシーンが多いけど、たしかにこの時間当時も黒人批判して話題になったり、そもそも昔から人種差別的だったのによく大統領になったなーと思ったり。笑)

 最後に、冤罪が判明しても一切間違いを認めずこれでもかってくらい開き直りまくる警察は典型的。笑

最終的に小説家になったと思われるあの金髪女性刑事なんて、真犯人が名乗り出てからもまだ少年たち疑ってたしね。

(余談: 実際の女性刑事は、このドラマ公開後にかなり批判を浴びたらしく、のちに番組を訴えています…)

 

最後に出てくる本人達の顔を見て、一番長く服役してたコーリーはやっぱり凄まじい経験をしてきた人のような顔をしていた気がする。笑

10代の一番楽しいはずの時間を奪われた彼らが、少しでも今の生活で安らぎを得られていることを祈るばかり。

 

 

評価

 

☆星 4.8 個☆

 

 

※感情に訴える少年たちの演技が最高。

※事件についてよりも、少年達一人一人に焦点が当てられているストーリー。