洋書レビュー第2回は…『The Woman in the Window(ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ)』。
もちろんサイコスリラーです!!笑
今作は、2020年公開の予定が延期となり公開日未定のままとなっている注目映画の原作。
映画の主演はエイミー・アダムス(今作のために太った中年女性に役作りしたらしい)。その他出演者はジュリアン・ムーア(『ハンニバル』)、ゲイリー・オールドマン(『ダークナイト』)、アンソニーマッキー(『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』)など大物が揃っているので期待大!!
作者A. J. フィンにとって初めての小説らしいけど、このクオリティはすごい。
細かい伏線や秘密、思わぬ展開の繰り返しでハマること間違いなし!!
和訳もされていたので、興味のある方はこちらをどうぞ↓↓
今年5月には、延期されていた映画版がNetflixで公開されたのでそちらも注目!!
主演はエイミー・アダムス。その他にもジュリアン・ムーア、ゲイリー・オールドマン、アンソニー・マッキーなどの大物が共演している注目作品です。
ストーリー
精神科医のアナは広場恐怖症で、ほとんど家から出ない生活が続いていた。ワインと薬に家の窓から近所を覗いていたところ、新しい隣人宅で殺人事件を目撃してしまう。
著者:A. J. Finn
登場人物
アナ・フォックス
ニューヨークに住む広場恐怖症の精神科医。
ジェーン・ラッセル
アナの家の向かいに越してきたラッセル家の妻。
アリスター・ラッセル
ジェーンの夫。
イーサン・ラッセル
アリスターとジェーンの息子。
エド・フォックス
アナの夫。娘はオリビア。
感想【ネタバレ無し】
ストーリーが進んでいく中で次々と明らかになる謎や伏線、ひねりの効いた展開が面白くて夢中に読んでしまいました。
最初は家から出られない中年おばさんの日常、なんだけど、少しずつ登場人物が増えて、少しずつ違和感のある出来事が起き始めて…ラストにかけて盛り上がっていくという感じ。
主人公のアナは広場恐怖症(家の外に出られない)で精神的にも不安定なキャラクターだけど、それがこのストーリーの鍵でもある。お酒と薬の影響で何が本当で何が幻想か自分でも分からなくなって行く主人公と一緒に読者も惑わされていく感じが面白い。
登場人物は多めだけど、それぞれに役割があって謎がある。
アナ目線でストーリーが進み、基本的には会話のような文章ばかりなので(英語で読むとしても)難しい単語もなく読みやすい。ニューヨークという土地、街並み、建物の雰囲気を思い浮かべながら読むとディテールもわかりやすくて面白いと思います。
本ではめっちゃ良い子の日本人ハーフ青年が近所に住んでるんだけど、映画でも出てこないかなーとちょっと期待。(でもキャストにアジア人らしき名前は無し…泣)
英語の読みやすさ ★★★★☆
ハマり度 ★★★★★
どんでん返し度 ★★★★☆
感想【ネタバレあり】
登場人物達の秘密
それぞれのキャラクターに役割と秘密があって、それが少しずつ暴かれて行く様子も今作の面白いところ。
イケメンテナントのデイビットが実は前科者だったり、キュートな好青年イーサンが実はサイコパスだったりして、一見して全く分からない(でもあり得そうな)「その人の正体」がこの本の怖さなんだと思う。
アナは家の窓というフィルターを通してご近所さん達を観察しているんだけど、見ているだけじゃその人の本質なんて到底分からないんだっていう怖さが今作のキー。
人間って外見やイメージで物事を簡単に判断してしまいがち。
特にジェーンがそのいい例。
アナには自分をアリスターの妻として紹介していてイーサンとも一緒にいたし、ラッセル家の妻としての彼女に疑問を持つ理由も無いような存在だったけど、アナの目撃情報で全てが覆されてしまうっていう。まぁそれが面白いところではあるんだけど。
ラッセル家
最初はジェーンの殺人が夫の妻殺し風に始まるんだけど、アナが最初からイーサンをお気に入りにしてる感じが怪しかったんだよねー。
新しい隣人となったラッセル家の状況が、見た目によらずとーっても複雑。ジェーンには何かしらの秘密があるんだろうとは思ってたけど、養子とは…そう来たかと。最初に出てくるジェーンはアリスターの浮気相手かなんかだと予想してた。笑
イーサンは完全にサイコパスだけど、動機を考えると(母と同じ歳くらいの女性をターゲットにしてるのとか)結局子供なんだなーと。
イーサンが黒幕だっていうのは途中からわかってくるんだけど、最終的なアナvsイーサンの決着は割とあっけなかったかな。アナが「美少年にまんまと騙されたおばさん」て感じになってちょっとイタイ感じに…笑
この本読んでてずーっと違和感があったのはアナと少年たちの関係。
アナは家族を亡くしてて寂しいのはわかるけど、イーサンやタケダ家の息子を見る目は完全に”変態おばさん”な感じでちょっと引く。これ逆(おじさんと少女)だったら即通報されてるぞ!!
アナの信憑性
優しいリトル刑事と、単刀直入で現実的なノエリ刑事の対照的な態度は、アナのような精神的不安定な人への世間の態度の二極化を表していたと思う。
でも結局同情はするけど、信用はしないっていう。
そんな状態のアナの信憑性の無さを利用したイーサンは(犯罪者として)賢いなーと。
人の家を覗き見たり、ネットストーキングで他人の秘密を知ったような優越感を味わっていたアナだけど、実際には窓からの景色とインターネットの情報しか知らない彼女のことを、”籠の鳥”のように操っていたイーサンの悪趣味具合いよ。笑
自分も広場恐怖症なのに、オンラインで患者のカウンセリングをしているのはある意味皮肉ではあるんだけど、イーサンが広場恐怖症のおばあちゃんのフリして会話するのとか、趣味悪過ぎて引く。
でも、ワインと薬を一緒に飲んだり(良い子は真似しちゃダメ)毎日あんなに酒漬けになっていたのに、結局アナが見た全てが現実だったっていうのはちょっと拍子抜け。夫と子供の幻想はともかく、実は自分が殺人に関わってたって展開もちょっと期待してた…笑
まとめ
サイコスリラーだけど難しいひねりは無くて読みやすかった。
後半に向けてスピード感のある展開になってきて、登場人物の謎が次々明らかになっていくから止まらなくなってしまう「ハマる本」だと思う。
変な人ばっかり出てくるから登場人物に共感できるタイプの話ではないけど、俯瞰で読んでみると面白いはず。映画の公開が決まってるけど、ストーリー的に映画向きの作品だと思うし、絶対面白くなると思う!期待!!
早く公開してくれることを願うばかりです。
評価
☆星 4.5 個/ 5 個☆
※人間たちの醜い部分を描いた作品は結構好き。
※人間の心理描写がうまくて、引き込まれる。