探偵Lの映画ブログ

カナダ在住の映画&ドラマオタクが探偵気分で映画をレビューするブログ

Netflix『ある告発の解剖』大物俳優たちが競演!!最後まで考えさせられるサスペンスドラマ

私が今作を観始めた理由は、完全に『ダウントンアビー』のミシェル・ドッカリーが理由!!笑

彼女以外にも、今作にはとにかく人気俳優が多く出演していて、(シエナ・ミラー『アメリカン・スナイパー』、ナオミ・スコット『アラジン』など)見応え抜群です。

 

イギリスのサスペンス作品好きなんだよなー。

ダークな中にもスパイスが効いていて、ダークな北欧サスペンスと、過激なアメリカサスペンスのちょうど中間を行っている感じが。

 

今作については、サスペンスよりもヒューマンドラマ色が強いかも。

 

性犯罪をテーマにしているし、ちょっと見るのが辛い人もいるかもしれないけど、特に男性に見てもらって、彼女や奥さんと議論してほしいと思った作品でした。

 

 

 

ストーリー

ソフィーは、将来有望な若手政治家ジェームズ・ホワイトハウスの妻として、二人の子供と幸せな日々を送っていたが、夫への不倫告発&レイプ疑惑訴訟を受け、円満な家族の生活は一変する。

 

キャスト

ソフィー・ホワイトハウス【シエナ・ミラー】

専業主婦として二人の子供を育てる政治家の妻。

 

シエナ・ミラー、ものすごい美女なのにいつも何故かパッとしないと思っていた。(失礼)

今作では、相変わらずその美しい佇まいが素敵!悲しげで影のある役どころがぴったりだった。この役は当たり役!!

 

ジェームズ・ホワイトハウス【ルパート・フレンド】

内務大臣を務める将来有望な若手政治家。首相とはオックスフォード大学時代の旧友。

 

こんな人いそう、なイケメン特権階級おぼっちゃま感がピッタリ。彼の優しくて善良な雰囲気が、またジェームズの複雑なキャラクターにはまってた。

 

ケイト・ウッドクロフト【ミシェル・ドッカリー】

キャリア最優先の、優秀な弁護士。

 

メアリーーー!!!笑

相変わらずお堅いキャラクターだけど、過去に囚われる孤独なケイトの冷たい雰囲気がピッタリ。このほと年を重ねるごとに魅力が増しますねー。

 

オリヴィア・リットン【ナオミ・スコット】

ジェームズの部下で、不倫相手。

 

やっぱかわいいわー。アラジンの時からファンだけど、今作ではちょっと意外な役どころでびっくり。

そのかわいらしさが、不倫相手としての小悪魔感にピッタリだったのかも。

 

ここからネタバレあり!!

 

感想

見どころ

性犯罪という繊細なトピックの、本当に繊細で些細なところまで掘り下げて描いていることが見どころ。

女性として理解できることもあれば、微妙すぎてわからなくなることもあって、とにかく考えさせられた。

 

邦題は「スキャンダル」を「告発」と訳しているけど、ストーリー的には、”スキャンダル”を解剖していったら、スキャンダル以上の闇があった…っていう感じかも。

 

そして、自分が一番の理解者だと思っていた「優しい夫」が、実はどんな人間だったのか気づいてしまう恐ろしさと悲しさも感じた。

そんな可哀想な妻を演じる、シエナ・ミラーが、今作では特にいい味を出してます。

美しくて薄幸な感じがまたいいの!!笑

 

登場人物それぞれの見解や目線で見られるシーンも(それぞれの記憶が違っているのも面白い)。

法廷シーンで、まさにその瞬間から抜け出てきたかのような見せ方にも注目!!

 

特権階級たち

裕福な家庭で育ち、若い頃から特権階級としての恩恵を受けてきた政治家の夫・ジェームズ。

彼以外にも、似たような特権階級民が出てくる今作。

 

「特権階級」なんて聞くと、勝手に”嫌な人たち”というレッテルを貼りがちだけど、悪い人とは限らない。渦中のジェームズも悪い人ってわけじゃない。ジェームズは家族思いで妻にも子供にも優しいし、誰もが羨む理想の夫。

 

ただ、悪いことをしたときに正しく裁かれないずるい人たちではある。

 

ジェームズも”スキャンダル”として騒がれたけど、結局無実。最初からわかってたよ。笑

それでも、前半までは特に真相やお互いの思惑がわからなくてドキドキしながら観てました。

 

加害者が根っからの悪い人間じゃないからこそ、特に裁判の前半のやり取りでオリヴィアの告発もどう判断すればいいかわからなかった。(ジェームズの弁護士がやり手すぎる)

実際、オリヴィアもいい大学出て政治家のオフィスで働いてる”特権階級”なんだけどね。女性はそうは見られないけど。

 

あと、これは余談だけど、このストーリーでは終始”かわいそうな妻”であるはずのソフィーも、実は大学時代の課題を全て自分より賢くて格下の”勉強仲間”ホリーにやらせて、その成績で自分はちゃっかり大手出版社に就職したことを夫には話していないというせこい一面もあり。笑

 

エリート学生時代の、いわゆる陽キャと陰キャの格差みたいなものもここでは垣間見える。

ホリーとの関係も、学生時代から美人で人気者の彼氏がいた勝ち組・ソフィーは、その”特権階級”としての立場を利用していたわけだし。

 

ただ、ソフィーの救いは、夫のスキャンダルでそれに気づいて、少しだけホリーの気持ちを理解できたってことかも。

私は最後までこの人ちゃっかりしてるなーと思っちゃったんだけど。笑

 

スキャンダル!?

人気政治家の不倫が暴露され、マスコミが喜ぶスキャンダルとして騒がれたジェームズの事件。

 

オリヴィアとの関係は、彼女の復讐心もあったのかもしれないし、ここまで絶妙だとその線引きが難しいけど、お互いに好意があったとしても許されることとそうじゃないことがあって、その境目を当事者以外が理解するのは難しいと思った。

うん、ここまでは「スキャンダル」

 

ただ、ホリーの事件が浮上してからはオリヴィアの事件の見方が一変する。

 

ケイトがホリーだったっていうオチは、若干「えーーー、そんなのあるーーーー」って感じではあったけど、そこからストーリーの深みが増していきます。

ホリーは名乗り出なかったし、ケイトのキャリアに関わるから告発もされないけど、この事件とオリヴィアの事件とのつながりが、結局真相を明らかにする鍵になるわけ。

 

ここからのストーリー展開が面白くて、すごく考えさせられる。

ホリーとジェームズの過去のシーンは、本当に絶妙で、観ていても何かがおかしいことに気づかない人も大いにいるのではと思ってしまった。でもそのニュアンスの再現が上手い!

全部観終わってからも色々思い返してしまった…。

 

あと、私が気になったのは、ジェームズの「故意」

ジェームズは、どこまでもいい人のキャラクターを保っているし、オリヴィアの時もホリーの時も、本当にわからずにやっていたのか、自分のしていることをわかっていながら、していたことだったのか。

 

でも、裁判で「あの一言」を言っていないと嘘をついていることからも、やっぱり罪悪感があってやったことだったと言えるのかも。

 

 

被害者目線なストーリー

ジェームズとホリーの件を「あの時は若かったから」って言い訳もあるかもしれないけど(ジェームズもそんなこと言ってたような。もしくは気付いてもいない!?)、それで済むのは飲み会での失敗まででしょう。

これについては性犯罪で、20年経っても悩まされている被害者がいるわけだからね。

 

今作は、被害者の複雑で繊細な感情を絶妙に表現することで、性犯罪被害者目線で作られたドラマや映画の中でも一番と言っていいほど素晴らしかった。

過激なシーンなしに、ここまで強くメッセージを発信できていたのは、やっぱり今作の俳優さんたちの演技なのかな。

 

性犯罪って告発までに時間がかかることが多くて、「そんな昔のこと」っていう人もいるけど、「今になってやっと心の整理がついたから」な訳だと思うの。被害者にしてみたらきっとトラウマだから。

 

「なんで今更?」じゃなくて、まず「ついに決心がついた」被害者のその勇気を讃えるようなカルチャーが必要よね。

ケイトも裁判中言ってたけど、こんな告発して被害者にはなんの得もないんだからさ。

 

残念なことに、リアルライフでは今作のジェームズみたいにしっぺ返しが返ってこないパターンが多いんだけどね。

 

今作を観て、とにかく考えを巡らせて、話題にすることが重要なんだと思う。

気持ちの良い作品ではないかもしれないけど、ここ最近見たネットフリックス作品の中ではかなり良作だったと思います。

 

おすすめ!!