今年の目標は本を読むこと。
(わたしもそうだけど)英語のリーディングは苦手だけど、勉強の意味も込めて英語の本を読みたいっていう人結構いると思う。
でも、面白く無いならすぐ読むのやめちゃいそうだからレビューが知りたい!ちなみに英語ネイティブじゃない人への読みやすさも知りたい!と思っていたので、同じような人がもしいたらお役に立てればと思って洋書のレビューを始めました。
ということで、ここ数年ずーーーーーーーっと「読みたい本リスト」に入っていた”GONE GIRL”から始めることに。今作は作者ギリアン・フリンの代表作となったサイコスリラーです。2012年に出版され「サイコスリラー・オブ・ザ・イヤー」にも選ばれたヒット作で、サスペンス・ミステリー好きな人におすすめ。
2014年にはデヴィッド・フィンチャー監督により映画化もされていて、主演はベン・アフレックが務めています。
公開時の評価も高かった人気作品のようなので、観たことがある人も多いかも。(私はまだ)
ちなみにこの本は日本語訳もされているので、日本語で読みたい方はこちら。
ストーリー
結婚記念日に妻エイミーが失踪し、夫ニックが殺人の疑いをかけられる。
メディアに取り上げられ、警察にも追い込まれるニックは無実を訴え続けるが…
登場人物
ニック・ダン
元ライターだが失職中。
エイミー・エリオット=ダン
ニックの妻。夫との結婚記念日に謎の失踪を遂げる。
マーゴ・ダン(ゴウ)
ニックの双子の妹。家族が所有するバーで働いている。
感想【ネタバレ無し】
とにかく登場人物がみんなキモイ!!不気味でクセのある人ばっかり。
特に物語が進むにつれてエスカレートしていくから、キャラクターに共感しながら読みたい人は好きじゃないかも。
「どんなストーリーにも2つの側面がある…」って文言が本の表紙にあるように、夫ニック側のストーリーと妻エイミー側のストーリーに分かれて交互に展開して行きます。そこで夫婦のすれ違いやお互いの気持ちの変化が見えてまた面白い。
結婚してある程度の年数が経って新婚の時のときめきはもう無いけど、かといって熟年夫婦のような人生パートナーみたいな絆はまだ無い、そんな中年夫婦の関係を描いていていろいろと勉強になった。笑
結婚生活って長いし、お互いのいいところも嫌なところも知って、理想と現実の間でモヤモヤしながらやって行かなきゃいけなかったり、相手の家族とうまくいかなかったり…現実を見せられた感じ。
少しずつ明らかになっていく妻失踪の真相と夫の秘密、そして事件をエンターテイメントとして消費するメディアと世間の描写がひたすらカオス。
人間って醜いなー。
ラストについては賛否両論分かれると思います。でも最後の最後まで結末に予想が付かないから、どうしても読み切りたくなるはず。作者ジリアン・フリンは、作品を書き始めた当時ラストについては決めていなかったらしいけど、それもある意味すごい。
ちなみに、作品内で使われるのはほとんど口語なので、難しい単語も少なく初心者でも読みやすい洋書だと思います。
英語の読みやすさ ★★★★★
異常度 ★★★★☆
ハマり度 ★★★★☆
〜ここからネタバレあり〜
感想【ネタバレあり】
癖が強すぎる登場人物達
この本は、とにかく登場人物が普通じゃない。みーーーんな嫌なやつ!笑
主人公の二人だけじゃなく、脇役も全員が全員自己中で性悪、と言うか屈折してるんだよなー。(強いていえばニックの浮気相手アンディが一番まともかもしれない。笑)
一見まともなゴウについてはニックを助けているように見えるけど、(双子といえど)自分の状況は棚に上げて兄の夫婦事情に首を突っ込み過ぎな気も。てか、ニックとゴウの双子が異様に仲良過ぎて気持ち悪い。双子だとしても、微笑ましい兄妹愛の域を超えてる。夫が妹とここまで仲が良かったら妻としては気まずいかも。
TVホストのエレン、ボニー刑事、エイミーの友人ノエル…
作者が女性だっていうのもあるかもしれないけど、ニックがエイミーだけじゃなく色んな女性に振り回されまくるって言うのは興味深い。
夫vs妻
エイミーは、自分が固執していた「良い妻エイミー」のイメージをうまく利用して、この夫婦の戦いは(予想通り)妻の圧勝となるわけだけど、前半は夫婦の近いようで遠いもどかしい関係と、すれ違いの切なさに同情してしまう。結婚ってそんなもんなのかなーと思ってしまったり。
前半は読者の共感と同情を買って、後半で汚い真実をぶちまけたって感じ。笑
Part 2でエイミーの本性が明らかになってからは、ストーリーもどんどんダークになっていく。
ニックはようやく妻に立ち向かっていくのかと思いきや、いざ本人が帰ってくると腰抜け男に戻ってしまうと言う。
ニックは子供がどうしても欲しかったのか、それともエイミーが怖くて何も出来なかったのか、こんなにコロっと手懐けられてしまったのにはガッカリ。
実際、この夫婦もその両親もみんな金銭的に追い詰められてて、仕事も無いし世間の目もあるし、このままエイミーの事件(計画)を本にしてがっぽり儲ける方が安泰だと判断したのかもしれない。(フィクションだけど、こういうとこちゃんと考えて作られていると思うの)
そして、ニックみたいな人は誰かに管理されながら犬のように飼われる方がまともな生活を送れるタイプの男なのかもしれない。(ひどい)
(最後のゴウに相談して慰め合うみたいな場面は、やっぱりこの兄妹ヤバイな、と再確認した瞬間だった。笑)
エイミー
エイミーの気持ち悪いところは、こう言う人いるかもって思わせる「一見普通の女」感。笑
特に女性はいろいろ期待されることが多い(女性は美しくあるべき、料理が出来るべき、子供を持つべき、みたいな想定)と思うし、そんなストレスや悩みを日記の中で吐露していたエイミーには共感できたし同情してた。それは警察もメディアもそうだったはず。(読者もまんまと騙される)
結局、それはニックを陥れるための小細工(でも本音も含まれてるんじゃないかと私は思う)だったんだけど、デシを殺してからはもうそのサイコ具合に吐き気がしたわ。デシも決していいやつじゃ無いんだけど、流石にエイミーへの同情は一切無くなってしまった。
確かに、彼女の「自分殺害計画」への緻密さとコミットメントはすごいんだけど、身を隠している間に出会った二人に所持金取られちゃったり、庶民なら心得ているはずの単純な日常の知識(人前で大金をチラつかせない、とか)が無かったりして、お嬢様育ちが裏目に出てしまう場面は滑稽でもある。
ちなみに、タイトルの”GONE GIRL”、失踪したエイミーは女の子って歳でも無いのにあえて”GIRL”になってるのは、エイミーが両親の本”Amazing Amy”の主人公(少女)のように世間に見られているって意味を含んだタイトルだったんじゃないかなー。
賛否両論なラスト…
エイミーはどこかでミスをしでかすと思って待ってたけど、最後まで隙が無くて完璧なサイコ女だったね。笑
正直ニックには最後にエイミーを刑務所送りにして欲しかったけど、女に弱い(作中でも色んな女性に振り回され続ける)このやさ男にはエイミーを出し抜くのは無理だったわけ。笑
ニックが疑われることでより「儚く美しい悲劇のヒロイン」のイメージが定着していって、世間はまんまとエイミーの計画を信じ切ってしまっていたし、エイミーが帰ってきたときにはもう全てを覆すには手遅れだったんだと思う。
個人的にはすっきりしない終わり方だと思ったけど、どう転んでも良い終わり方にならない気がする。ニックとエイミーみたいなサイコ夫婦ならこれしか道がなかったのかなと。とにかく子供がかわいそう。エイミーのようなサイコになってしまうのだろうか…
結局、数年後に夫婦どっちかが「事故で不審死」みたいな結末が待っている気がする。笑
評価
☆星 4 個/ 5 個☆
※人間たちの醜い部分を描いた作品は結構好き。
※人間の心理描写がうまくて、引き込まれる。