探偵Lの映画ブログ

カナダ在住の映画&ドラマオタクが探偵気分で映画をレビューするブログ

【事実と比較】映画『ハウス・オブ・グッチ』豪華キャスト!!ラグジュアリーブランド一家の転落と愛憎劇。

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ラグジュアリーブランドエンパイアの転落を描いた、実話が元のヒューマンドラマ。

3時間近い大作だけど、飽きずに観られた。さすがリドリー・スコット監督

原作はサラ・ゲイ・フォーデンのノンフィクション小説「ハウス・オブ・グッチ」。

 

お金ってあってもなくても大変なのね。

そして、そこに家族の問題が関わるとより大変!!笑

 

レディー・ガガとアダム・ドライバーは本人そっくり!!特に、レディ・ガガのイタリアアクセントは完璧!さすがイタリア系!

イタリア系といえば、もちろんアル・パチーノも!!

はじめはロバート・デニーロもキャスティングされていたらしいけど、このキャストでちょうどよかったのでは。

 

グッチ定番のベルトやバッグは出てくるんだけど、”GUCCI”目当てに観ると言うより、リッチな家族の愛憎劇が今作のテーマ。

個人的にはもうちょっとグラマラスなのを期待してたけど、実際に起きた事件のことを考えるとこのくらいがちょうど良かったのかも。

 

現在では、一切グッチブランドと関わりがなくなっているグッチ家。

いろんなキャラクターがいて、ヒューマンドラマとしては面白いけど、今作について実際のグッチ家がハッピーじゃないのは明確。笑

 

パトリツィアの共犯者ピナ役が、現在グッチを所有するケリングCEOの妻サルマ・ハエック(『エターナルズ』にも出てて最近売れっ子)なのは、皮肉!?笑

mobayuri.hatenablog.com

 

実話が元だけど、映画らしく多くの脚色が加えられてるから(おバカキャラなパウロとか)、実際の出来事とも比べてみました。

実際に起きたグッチ家の事件も、そのままでも十分びっくりだけどね。笑

 

結末はわかり切っている作品ですが、ここからはネタバレ多数あるので注意!!

 

 

あらすじ

家族経営のラグジュアリーブランドとしての地位を築いてきたグッチ家。

後継のマウリツィオとその妻パトリツィアは順風満帆な結婚生活を送っていたが、グッチブランドをめぐる家族内の権力闘争を経て、冷え切ってしまった夫婦関係。

絶望の中で、パトリツィアはある恐ろしい決断をする…

 

キャスト

パトリツィア・レッジャーニ(グッチ)【レディ・ガガ】

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出演作:『アリー/スター誕生』など

 

グッチの跡取りマウリツィオの妻。

夫の立場とグッチのブランドを守るために翻弄する。

 

レディ・ガガの作品を見るのは実は初めて。

でも、あの個性派カリスマ歌手から演技は女優に大変身した彼女。力強いキャラクターを自信満々に演じる姿がカッコ良かった。

 

今作では、芯が強くプライドの高いキャラクターながら、夫とグッチブランドのために尽くす良妻ぽく描かれてはいたけど…

 

実際のパトリツィア

産みの父を知らずに育ち、幼少時代は貧困を経験。パトリツィアが12歳の時に母が裕福な実業家と再婚。映画では一般家庭の娘みたいに描かれてたけど、パトリツィアのレッジャーニ家はグッチ家ほどではないものの、それなりに裕福な家庭でした。

 

しかし、幼少時代の貧困経験から、格式や富への執着が強かったパトリツィア。

グッチ家の跡取りマウリツィオとパーティーで出会い、交際2年で結婚。彼の地位と名声は、彼女の理想そのものでした。

 

マウリツィオと結婚してニューヨークに移住してからは、パーティー三昧な豪遊生活を送っており、ジョン・F・ケネディー夫妻やセレブリティとも交友があったそう。パトリツィアは、いつも豪華なファッションやジュエリーで着飾り、グッチ家の富を存分に楽しんでいました。

 

グッチの名声と格式を心底愛していたパトリツィアは、離婚後も自身を”パトリツィア・グッチ”と名乗り続け、その品位を守り続けようと必死だったそう。

そして、家族を顧みず自分を捨てたマウリツィオへの恨みを増していきます…

 

マウリツィオ・グッチ【アダム・ドライバー】

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出演:『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』、『パターソン』など

 

グッチ家の跡取り息子。

 

パトリツィアの存在感とキャラクターの濃さがこの映画の見どころ。そのキャラクターを理解して、アダムはそれをよく引き立てていたと思う。

 

権力を手にして冷酷なビジネスマンと化していくマウリツィオ。実際はこの程度では済まないほど冷酷な彼。今作ではパトリツィアの犯行の動機についてが弱めだけど、実際の出来事を追うと彼女の怒りが理解できるかも…

 

実際のマウリツィオ

俳優ロドルフォ・グッチと女優サンドラ・ラヴェルの一人息子で、幼少時代に母を亡くしている。

 

映画では、弁護士を目指すウブなガリ勉君。グッチ家の財産にも興味なさげなマウリツィオ。でも、実際はそんなことはなく(弁護士志望だったのは事実だけど)、若い頃からグッチの店頭で手伝いをして家業に関わっていたらしい。

 

父の死後にグッチの50%のシェアを受け取って以来、優しかった彼は人が変わってしまったように冷酷になり、お金のことしか考えない自己中心的な人間になってしまったそう。

実際、父ロドルフォはマウリツィオにはグッチシェアの管理をさせ、シェアを引き継がせたくはなかったんだとか…

 

新しい改革を望んでいたマウリツィオは、家族でブランドを築いてきた伝統を守りたいアルド側と対立し始めます。

マウリツィオはブランドのシェアを利用して、長年会社のトップとしてグッチを世界的有名ブランドに導いてきたアルドを追い出し、家族中の反感を買いました。

 

いとこのパオロも追い込んでグッチのシェアを搾り取り、企業に売ってしまうマウリツィオ。

ブランドのシェア売却は、グッチブランドを新しく改革することで再びその品格を取り戻すことが一つの目的だったが、実際はこの改革に多額の資金を使い、私生活でも豪遊をしていたため、多額の借金を抱えていたそう。

暗殺は、借金取りのしわさだとの噂もあったほど。

 

 

パオロ・グッチ【ジャレット・レト】

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出演作:『チャプター27』、『ダラス・バイヤーズクラブ』など

 

マウリツィオのいとこで、おバカな変わり者。

 

誰だか全然わからないジャレット・レト。全然知らなかったけど、彼もう50歳なのね!

ジョーカー のイケメンオーラは一切なしで、今作ではダサいハゲオヤジになりきってた。笑

パオロ本人のインタビュー聞くと、話し方はそっくり!!

 

このキャラクターのおかげで映画がより面白くなってはいたんだけど、実際のパオロはこんなおバカキャラではなかったし、父の告発もアクシデントではなかった…

 

実際のパオロ

映画ではアルドの一人息子として登場するパオロですが、実際にはアルドには複数の子供達がおり、パオロはその中の一人。グッチのデザイナーとして働いていた。

 

父とともにグッチのビジネスに関わっていたが、父や叔父に無断でよりお手頃な自身のラインを作ろうと提案しましたが、アルドと叔父のロドルフォはそれを認めず、グッチの重役から外されます。

 

それでもパオロは諦めず、グッチの名前を使って自分のラインを立ち上げようとしたことから、グッチをクビになり、さらに父に訴えられてしまいます。

これが原因で、父アルドの脱税疑惑を告発。刑務所送りにします。(すごい復讐。)

 

しかし、離婚後の慰謝料請求等で金銭的に困窮していたパオロは、マウリツィオの説得により所有していたグッチのシェアを売ってしまい、アルドの怒りを買います。(経緯は違うけど、これも映画と同じ)

 

アルドの死後、最後までマウリツィオとブランドをめぐって争ってきたのはパオロでしたがついにマウリツィオからグッチを追い出され、妻とも離婚。妻子への慰謝料や今までの豪遊生活が原因で自己破産をしており、脱税と元妻子への慰謝料を払わなかったことで投獄もされています。

 

最後は、貧困生活を送りながら肝炎で亡くなりました。

悲しい最後…。

 

 

感想

今作、「構想20年」って言われてるけど、映画消費時代の今、時間をかけて構想を練っていたと言うよりも、タイミングを伺っていたのでは?と思ったり。

90年代の事件だし、30年経った今だからこそ、ようやく映画作品として語られるにふさわしいタイミングになったってことなんじゃないかと。個人的にはそんな気がします。

 

作品として、みんなが知ってるクライマックスを一番最初に持ってきて、そこにたどり着くまでのヒューマンドラマを描いていく流れはすごく引き込まれたし、お金や権力が家族を壊していく様が、何とも惨めで悲しい…

 

華やかなラグジュアリーブランドの話なのに、終始ダークな雰囲気で映像も色の演出が控えめなのは、わざと??もうちょっとキラキラしたシーンを期待してたかも。

パオロみたいなキャラクターを使うのであれば『ウルフ・オブ・ウォールストリート』みたいな大袈裟な演出があっても面白かったんじゃないかと思った。

 

キャラクターの再現度

この映画の見所は、とにかくレディ・ガガのアクセントと谷間だね。笑

 

パトリツィア本人と見比べると分かるけど、しっかり目な化粧にボリュームのあるヘア、肝っ玉母ちゃん的なオーラの再現度高め。全てがオーバー・ザ・トップな感じ!!笑

リッチで濃ゆーいイタリアンな女性を、カッコよく演じきっていたと思います。これだけの大物俳優に囲まれて、自信が溢れ出る迫力の演技もすごい。さすが、ガガ様。

 

アダム・ドライバーの元の顔つきは全然マウリツィオと似てないと思うんだけど、髪型とか、背格好とか、パトリツィアとのツーショットを見ると、あの身長差のバランスがぴったりだなと!

冷酷さがすごくいい。笑

 

最初のシーンから、グッチの定番GGベルト、アビエイタースタイルのメガネ、ローファーを身につけててワクワクした!!

 

でも、やっぱり今作の面白さはパオロとアルドの親子にある!

この二人の愛嬌が、より彼らの転落劇を悲しいものにしていると思う。特に、アルドは終始”いい叔父さん”だったのに、最後には甥っ子にバッサリ切り捨てられてしまうと言う悲しさよ…

アル・パチーノの”パパ感”好き。

マウリツィオの父ロドルフォ役のジェレミー・アイアンズも、”元役者”感も素敵だったなー。

 

アメリカ映画として

このイタリアアクセントは日本語で見たらどうなってるんだろう。

パトリツィア本人がインタビュー受けてる映像見たことあるんだけど、もうこのまんま。このアクセントと喋り方。すごいよ、ガガ様。

 

いつも思うんだけど、例えば日本が舞台でキャラクターがみんな英語喋ってたらめちゃくちゃ違和感あるはずなのに、ハリウッド映画はヨーロッパが舞台のストーリーを”アクセント”をつけることでどうにかそれっぽく見せて作るの、面白いよね。

日本人英語を喋るキャラクターだけの、日本が舞台のアメリカ映画なんて、想像しただけでちょっとやだ。笑

でもイタリア人もそう思ってるのかな、今作のこと。笑

 

これは『ブラックウィドウ』でも思ったことだけど。

あのロシアアクセントが…笑

mobayuri.hatenablog.com

 

事実と比較

映画の中でのグッチ家はバラエティ豊かなキャラクターが面白いんだけど(特に、全て、パオロ笑)、実際のグッチ家メンバーはここまでクレイジーではない!

でも、ブランドをめぐる家族間の争いはものすごかったようで、そこは映画以上に残酷だったんじゃないかと思う。

 

夫婦の関係

映画のタイムラインは1978年から始まるけど、実際はパトリツィアとマウリツィオは1972年には結婚しています。パトリツィアは1948年生まれだから、タイムラインが全部10年くらいずれてるのは、なぜ…??笑

 

グッチ家は二人の結婚に反対で誰も結婚式に参列しなかったのは事実だけど、マウリツィオの父ロドルフォは、結婚祝いにニューヨークのオリンピックタワーのペントハウスをプレゼントしてるから、父の息子への愛は強いのね。

 

1970〜80年代のグッチは全盛期。彼らのラグジュアリーライフぶりはものすごかったらしい。映画でも世界中にあるすごい家に住んでたけど、あらゆる場所に豪邸を所有していたり、当時一番豪華な競技用ヨットを所有していたり、豪遊ぶりもあんなもんじゃなかったらしい。

 

ビジネスを通して夫婦の愛が冷めていく様は生々しくて怖いんだけど、映画同様、マウリツィオはグッチブランドのシェアの多くを手にしたことを機に冷酷になって行き、その変貌ぶりから周りの友人や家族からも敬遠されはじめます。

 

離婚まで

ある日、出張でミラノの自宅を数日離れると家族に告げた後、人づてでパトリツィアに「もうこの家に戻るつもりはない」と離婚を告げたのは映画でも衝撃だったけど、事実です。笑

 

マウリツィオにはその頃すでに愛人がいたけど、数年にわたるパトリツィアのストーカー行為と脅しが原因で破局。映画にも出てきた幼馴染みのパオラは二人目の愛人で、パトリツィアとの結婚式にも参列していた古くからの友人だったらしい。こわ。

 

1994年に離婚が成立する際に、2億5千万ドルの慰謝料を受け取る提案を断るほど、パトリツィアは怒り狂っていた。パトリツィアのマウリツィオに対する恨みはものすごかったそうで、メイドや友人もみんなそのこと知っていたそう。

 

遺書の著名

バイクでの逃走劇の原因だった、実際に父の署名を偽造したのはマウリツィオ。

結局有罪判決を受けるも、後に無罪に。(おい)笑

 

はじめのシーンで、パトリツィアが父の会社で秘書として働き、サインも代わりに書いてるシーンがあって、ロドルフォの著名を偽造したのもパトリツィアがしたことのように描かれてるけど、その事実はなし。

 

パトリツィアは当時のテレビのインタビューでも夫の有罪を認めています。

 

経営のカリスマ:アルド

アルドは創設者の長男で、一番グッチのビジネスに深く携わっていた人物。(彼本当は5人きょうだい)作品内でも、グッチの舵を切っていただのはアルドであることがわかるけど、グッチが世界的な有名ラグジュアリーブランドになったのはアルドの経営手腕のおかげ

 

創設者である父グッチオ・グッチ(GUCCIのGGモノグラムは彼の名前から来てる)の反対を押し切ってアルドがブランドを拡大させたことで、グッチはラグジュアリーブランドとしての地位を築いた。

その手腕は高く評価されており、”マーケティングのカリスマ”として尊敬される存在だった。

 

脱税を告発された後、アルドの立場を狙っていたマウリツィオに追い込まれ、シェアの全てをインベストコープに売却。経営の知識も会社の管理の知識もないマウリツィオの、恩を仇で返すような行為は、家族(アルドの四人の子供達)や関係者に大きな衝撃を与えた。

 

アルドはマウリツィオの暗殺前に亡くなっていて、彼の死後はパオロがマウリツィオの暴走(ブランドシェアの完全売却)に対抗し続けていた。

 

変わり者でもバカじゃない:パオロ

パオロは確かに変わり者ではあったらしいけど、父をハメたのも自身のブランドを立ち上げようとしたのも戦略的なもので、今作で描かれているようなアクシデントでもわがままな凶行でもなかった。

経営方針等で父や叔父と対立することはあっても、グッチブランドを思ってのことだった。

 

作品内では「バカ息子」としてしか描かれてないけど、流石にこのキャラクターは侮辱的なんじゃないかと思う。

 

映画の最後で、パオロは「貧困で死亡」とされているけど、実際は肝炎で亡くなっています。でも貧困だったのは確かなようで、最後は精神的に追い込まれて自暴自棄になっており家族や愛人にも見放され、晩年は友人に面倒を見てもらっていたそう。

 

マウリツィアの暗殺

マウリツィオの暗殺は、占い師ピナとの関係が大きかったよう。

当時のパトリツィアはピナの影響で黒魔術にも入れ込んでいたと言われており、恨みで精神的にデスパレートだったんでしょうね。

 

映画だと、マウリツィオはインベストコープにブランドの売却とCEOから退くことを迫られた後に殺害されているけど、実際は、殺害当時すでにグッチのシェアを全て売却済みで、CEOからも退いており、グッチ家はマウリツィオが亡くなる数年前には全てのシェアを失っており、一切経営に関与していなかった

 

パトリツィアは、マウリツィオがグッチブランドを手放したことにも相当腹を立てていたそうですが、当のマウリツィオは、豪遊生活とブランドの改革事業への浪費で、すでに借金まみれ(彼の経営知識の欠如が招いたとも言われている)だったそうで、最後はシェアを売るしかなかったのかも。

 

大物の暗殺だっただけに、はじめは大きな陰謀(マフィアがらみとか)があるのだろうとも疑われていましたが、実際に暗殺に関わったのは、ピナが雇ったチンピラ達。笑

ピナとパトリツィアが怪しいサングラス姿で殺害依頼をするあのシーン、滑稽で笑えたけど、実際に引き金を引いたのは借金まみれだったピザ屋の店主(イタリアぽい)。笑

しかも、犯人逮捕まで2年もかかっています。苦笑

 

結局、マウリツィオの殺害を実際に行ったピザ屋は終身刑なのに、パトリツィアは求刑29年、実際の刑期は結局18年!!はい??

なんかフェアじゃないよなー。

 

殺害当時、マウリツィオは46歳でした。若い。

 

子供たち

実際夫婦には二人の娘(アレッサンドラ&アレグラ)がいて、二人ともブランドは引き継いでいないものの、父から2隻のヨットと複数の豪邸を継いでおり、数年前には脱税疑惑で起訴されていました。笑

 

現在はスイス在住だとか。