警察ドラマといえば犯人を捕まえるまでのストーリーが多いけど、このドラマは逮捕後の容疑者と捜査官とのやり取りのみで構成されていて、現場の映像も回想も無しに容疑者と捜査官との会話だけで事件の全てを明らかにしていく画期的な作品。
『事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」て言う日本の某熱血警察映画のセリフを思い出したけど、完全にこの逆パターン。笑
撮影シーンは尋問室、捜査官の待機室(?)、廊下、の3シーンのみで構成されているのに、事件の奥深さと捜査官同士の人間ドラマが奥深くて一つ一つのエピソードに釘付けになった。登場人物も少なめだから俳優陣一人一人の繊細な演技が光る!!
ふとした一言や行動にヒントが隠れてることもあるから、しっかり集中して見てないと大事な事実を見逃してしまうかも!?
この『クリミナル』シリーズはイギリス、スペイン、ドイツ、フランス編があって、それぞれのお国柄と捜査官チームにも特徴があって面白い。犯人役は各国の大物俳優が熱演しているという!!全作同じセットなんだけど、スペイン・マドリードのスタジオで撮影されているそうです。
個人的にはイギリス編が一番好きだったので、今回はこちらのレビューを。
他のも今後レビューするかも!
〜ここからネタバレあり〜
シーズン1【ネタバレあり】
エドガー
養女への性的虐待と殺害の容疑で逮捕されたエドガーへの尋問。
「ノーコメント」を繰り返していた養父。前半はずっと冤罪かなーって思ってたけど、最後にまさかの逆転。コーチと娘の関係の話がリアルですっかり騙されるところだったわ!笑
警察側は最初からエドガーを容疑者と確定してたけど、それには理由があったんだなと。情報を見つけたヒューゴもすごいけど、パッとしなそうな(失礼)トニーの尋問術はもっとすごい!捜査官はただ話を聞き出そうとするだけじゃなくて、相手の心理を利用して戦略を打ってきているんだっていう。かっこいい。
最後、連行されるエドガーの「君はいい父親だ」と言う言葉にポールが「娘はいないよ」って返すシーンは「わーーーーーお!」てなった。笑
彼らの仕事はただ容疑者に白状させることだけだし、そのためには嘘もつく。
ステイシー
妹の恋人への殺害容疑で逮捕されたステイシーへの尋問。
ステイシー役のヘイリー・アトウェルが熱演。彼女がこの手の役をやるのは珍しいから最初気付かなかったけど、辛い状況の中でも生意気な態度で捜査官たちを挑発するヤンキー役の感情表現がすごい!さすが演技派。
妹を庇ったって展開まではなんとなく読めた(ありがちよね)けど、 実は姉が妹の彼氏とデキてたっていう展開には「そうきたか!」と。自分の行いを恥じるだけじゃ無く、妹の行いにも責任を感じる姉の気持ちが伝わってきて辛い事件だったなー。
わずかな違和感に気付いて再尋問をしたナタリーのプロさもかっこよかった。ナタリーは実力で部下に慕われるボスって感じでいちいちかっこいいんだよなー、トニーが好きになるのも納得!
ジェイ
不法移民を乗せたまま行方不明になったトラックの運転手ジェイへの尋問。
大きな体にポーカーフェイスで最初はなかなか手強い相手かと思ってたけど、途中から急に心配そうな顔つきになって涙を流し始めるジェイの姿がかわいそうになってしまった。お金のためにやったことで、自分の中の良心との葛藤に苦しんでいるジェイ。自分の立場と移民たちの命との間で揺れ動くジェイと、それを追い詰めていく捜査官たちの攻防。
若手のヒューゴが、ウザイけど頭のキレる弁護士の追求をきっかけにヒューゴが実はアルコール依存症に悩んでいることがわかる流れはびっくり!弁護士もよく見ると確かにヒューゴも酔ってる人の口調なんだよね。この展開は面白かった!(ウォッカ職場で飲んでたらバレそうなもんだけどね。)トニーとナンシーが優しいんだよねー。
人間どこでどんな悩みを持っているかなんて分からないもんなんです。
結局最後はジェイの良心に訴えて聞き出した形になってたけど、ジェイが途中「俺や家族の安全はどうなる?」 って言ってたみたいに、現実はきっと法服が怖くて言わない人が多いんだろうなー、とか思ってしまったのでした。
シーズン2【ネタバレあり】
ジュリア
服役中の殺人犯の妻ジュリアへの事情聴取。
ジュリア【ソフィー・オコネドー】の演技すごい!キレイな女優さんなのに、このエピソードでは被害妄想のひどいかわいそうなおばちゃんにしか見えない!笑
事情聴取をしていただけなのに、相手の一言で状況がガラリと変わってしまうという面白い展開。ジュリアは今作の取調相手の中でも、何が本心かの判断が難しい人だったと思う。涙ながらに自分の不幸を語りつつも、内心はきっと警察を嘲笑ってたんだろうなー。だからこそ犯人しか知らない事実を話しても、余裕な顔していられたんじゃないだろうか。夫に相手にされない寂しさと悔しさでいっぱいだったんだろうけど、その恨みが愛人達へ向いてしまったという。
ジュリアのミスに気付かなくてガッカリしてたヴァネッサが、最後には挽回してジュリアの関与を裏付ける証拠を見つけ出したラストはかっこよかった。イギリス編の尋問チームは仲が良くて絆が強いのも好き。(他国は結構ドロドロ笑)
余談
ジュリアが自分の使ったティッシュを袖口隠すシーンが気になったんだけど、前にドクター・フィル(アメリカの人気精神科医)のポッドキャストで、警察に捕まったときに弁護士が来るまでは飲み物をもらっても飲んじゃいけないし、鼻をかんだりしたティッシュを警察署内で捨てちゃいけない(DNAを取られるから)。近くにあるものにもなるべく触らないように(指紋を取られるから)。って言う話をしていて、確かになと。警察も必死だし手掛かりになりそうなものは全て採取されて、保管されて、自分に不利に使われることもあるんだという。
アレックス
女性社員へのレイプ容疑で逮捕された不動産営業のアレックスの尋問。
お久しぶり!ジョン・スノー(『ゲーム・オブ・スローン』より)!!欧米の不動産営業の人たちってなんかギラギラしてるんだけど(日本の意識高い系サラリーマンみたいな笑)、そのウザさ(失礼)までキット・ハリントンが好演。
こんな事件ありそー。性犯罪は男性が絶対に不利になりがちだけど、その立場を利用する悪賢い女性もいるんだよなー。やだやだ。アレックスの弁護士、助言の時に泣いちゃってたけど過去に経験でもあるんだろうか…そういうサイドディテールがたまに出てくるんだけど、いちいち登場人物の全部が分からないところも、視聴者に想像を委ねられている感じも、嫌いじゃない。
性犯罪って特に繊細だし、容疑がかかっただけでも男性にして見たら大ごと。自分がアレックスの立場で、職場で逮捕されたとしたら「無実の証明書を出してくれ!」(営業職は評判が全てだし)て暴れたくなる気持ち、分かる…これは辛いわ。
ダニエル
小児愛者を暴くためのネットグループを運営するダニエルの尋問。
これ、ものすごく悪い方向に向かってしまった犯罪オタク(自分)の末路を見ているようで耳が痛かったです。笑
無駄な正義感に溢れた犯罪オタクはこうならないように気を付けなければいけませんね。潜在的な犯罪者がいたにしても、それを誘き出すのは相手(悪いってわかってて制御してる人とか)を後押しすることにもなってると思うし、性犯罪系はそもそもアレックスの件みたいに本人以外へのインパクトも大きい。
自分の行いに絶対の自信がある人ってちょっと間違えるとこうなってしまうんですね…
ダニエルみたいな人いるよねー。気持ちは分からなくもないけど、自警団するなら完璧じゃなきゃ、バットマンみたいに。つまりそれは我々個人の仕事じゃない。他人の心配より自分と自分の周りの人の心配からしようってことですね。
ダニエルが最初に通報したルイスも1回目のクビで反省してたかもしれないし、相手が過去にどんなことをしたとしても、他人の不幸を楽しむのは趣味悪いわー。
結局ダニエルは子供を失った寂しさもあったんだろう(理由言わなかったけど、自警団のせいでネグレクトになったってこと?*1)けど、子供がいなくなってもどうにかして母親であろうとして、他にいい趣味も見つからなかったんだろね。
自分は正義の味方のつもりで最後まで反省の色も無かったダニエル、隣人の話始めたりしてさ。この手の人は更生が難しそう。
自分の行動には真っ当な理由があるって信じ込んでるこういう人が一番怖いし危ないのかもしれない…
あと、ネットで知らない人とやり取りするときは色々気を付けようってことですね。
サンディーヴ
10年前の女性殺害事件で服役中のサンディーヴの尋問。
この事件はちょーーーーーーっと出来過ぎてたかな。
捜査官にとっておいし過ぎた展開ではあるけど、もし本当に不幸な偶然があるとしたらこんな事も起こり得るかもとも思ったり。(Crime of opportunityてやつですね)
話がどう転ぶのかと思ってたけど、そもそも最初の方でアナベルが「行方不明」って言ってるのに、「僕は殺してない」って言ったサンディーヴは最初から怪しかった。誰も殺されたって言ってないのに。
サンディーヴは考えていることが読めないタイプの人。元々ビジネスマンだし、動機はいつもお金絡み。さすがにアルフィは関係ないと思ってたよ。世紀の未解決事件は、実は不運が招いたものだったっていう。
後半アルフィ少年の失踪事件を担当していたヒューゴが帰ってきて、一か八かの賭けに出たのがターニングポイントだったね。この展開は面白かった!
ヒューゴはこれで昇進して、次回作でまた帰ってきてくれるといいな。(ポールが戻ってこなかったのは残念だけど。あの俳優さん好きなのになー。)
アナベルの殺人でもちゃんとアリバイ工作するほど賢い犯罪者なのに、最後は追い詰められてまんまと自白してしまう…ざまあみろー!ていう最後だったね。司法取引なんて持ちかけないで、大人しくあと4年の刑期受けとけばよかったのにー。欲出すからー。笑
うまく行き過ぎだったけど、確かに気持ちいい終わり方のエピソードだった。
でもわたしは、最後にトニーがナンシーと食事に行けたのが一番嬉しい!!
感想【ネタバレあり】
初回エピソードからすっかり虜になってしまい、イギリス編からスペイン、ドイツ、フランス編と一気に観てしまった。笑
イギリス編はチームワークが良いのも他の国のより楽しめたポイント。
主任のナタリーに思いを寄せる敏腕トニーと、それをサポートするヴァネッサ。ナタリーに気がありそうなイケメンポール。若手だけど頑張り屋のヒューゴ。そして、気が利く新人カイル。このキャラクターバランスが絶妙。
この作品は最初に多くを語らず、ストーリーが進むにつれて少しずつ事件の背景が判明していくのが面白かった。回想も犯行シーンも無いから、俳優人の演技力が際立つ。3シーンしかないこの作品がここまで面白くなったのは、俳優陣の演技が素晴らしいからでしょう。好きなやつです。
尋問室内と捜査官のいる待機室?との温度差もリアルぽい。タイトルのロゴにもなってる窓枠の明かり(尋問室は白、捜査官側は赤)がそれをより区別させるんだけど、深刻な顔をする容疑者のガラス越しに「今夜のタイ料理屋予約した?」とかって会話が繰り広げられるシーンとかシュール。笑
作中のカメラワークも秀逸。「これは事件のクルーなのか?」と思わせるような「匂わせシーン」が多々あって、でもそれが事件に関係あったり無かったり。自分も捜査官チームと一緒にクルーを探しているようなつもりで観れます!笑
でも毎日こんなことをするのが仕事ならそうなるんだろうなー。人間の心理を利用してアメとムチで容疑者を質問したり、時には嘘をついて手玉に取ったり。犯罪者かもしれない人と毎日心理戦を繰り広げるなんて疲れる仕事だわ。
人の心理って面白い。人の心に入り込む術を身につけて、誰かに嫌な記憶を思い出させたり、弱いところを自白させられたりしたら調子に乗りそう。自分のことをキレ者だと勘違いしてしまいそうだわ。笑
シーズン1も2も3〜4エピソードしか出てないんだけど、一つ一つが傑作だからこれくらいのボリュームでちょうどいいのかも…でもシーズン3が待ちきれない!!
次はどんな俳優さんの名演が観られるのか、楽しみです。
*1:エピソード内でペティサイドの活動は2017年からって言ってるから、5年前に子供が保護された原因は自警団じゃなかった。