そういえば、ブログのタイトル変えました。
最近はミステリ&サスペンスばかりでもないので、”探偵”を押しすぎないタイトルに。(またすぐ変えるかも笑)
2020年公開。監督は『横道世之介』、『南極料理人』、『モリのいる場所』など、素朴で温かい作品が得意な沖田修一監督。
個人的に『モリのいる場所』はすごく好き。山崎努さんの演技が素晴らしかったのもあるけど、数年たった今でもふと思い出してしまう素敵な作品でした。
最近なかなか邦画を観る機会が無かったんだけど、この手の映画はやっぱり日本の映画特有だよなーと思う。
特に大きな事件が起きるわけではなく、日常を追うだけのシンプルなストーリー。それがいい。
原作は第158回芥川賞と第54回文藝賞をダブル受賞した若竹千佐子さんのベストセラー小説。
タイトルからも分かるように主人公の出身地岩手の方言がいっぱい出てきます。ほっこりする。(自分東北出身ではない笑)
この映画を見た後には、おじいちゃんあばあちゃんや両親に電話したくなるはず。
あらすじ
75歳の桃子さんは、突然夫に先立たれ、ひとり孤独な日々を送ることに。しかし、毎日本を読みあさり46億年の歴史に関するノートを作るうちに、万事に対してその意味を探求するようになる。すると、彼女の“心の声=寂しさたち”が音楽に乗せて内から外へと沸き上がり、桃子さんの孤独な生活は賑やかな毎日へと変わっていく。
キャスト
桃子さん(現在)【田中裕子】
75歳、夫に先立たれ一一軒家で人暮らしをしている。
髪も白く、すっかりおばあちゃんな田中裕子さん。
でも、桃子さんの生活はまさにうちのおばあちゃんのようなリアルな毎日で、生活感満載なところも面白い。おばあちゃんだけど、肌の張り艶が綺麗で羨ましいかぎり。笑
桃子さん(過去)【蒼井優】
岩手から上京し、夫・周蔵【東出昌大:『コンフィデンスマンJP』など】と結婚。二人の子供に恵まれる。
蒼井優さん、わたしがここ数年で観た邦画のほとんどに出てた!本当に日本映画の80%の作品には出演しているんじゃ無いかと思う。笑
今作ではピュアでかわいい田舎娘を好演。かわいいよなー、年取らないよなー。
寂しさ達【濱田岳、宮藤官九郎、青木崇高】
桃子さんの心の声として登場する 謎の3人組。
なぜこの3人なのかは謎。なぜ3人いるのかも謎。笑
孤独から、自分で自分と会話を始める桃子さんの「寂しさ」として現れる精霊のような彼らがちょっとうざいような愛しいような…
濱田岳:『アヒルと鴨のコインロッカー』、『世界から猫が消えたなら』など
青木崇高:『真珠湾からの帰還〜軍神と捕虜第一号〜』、『ちかえもん』など
感想【ネタバレあり】
老いを考えさせられる
この作品は若者が見ても響かないかもしれない。
「ここまで生きてきて、あとこれくらい残っていて、ある程度の頃を成し遂げてきたけど今から一念発起して頑張るほどの気力と体力は残っていない。」
そんな年齢の人が見ると、桃子さんの姿はまさに自分の未来(もしくは現在)を見ているようで少し切なくなるはず。
わたしは、桃子さんの姿を見て今後の人生とか健康とか老後とかを考えずにはいられなかった。
一筋縄ではいかない家族
愛する人と幸せな結婚をして子供に恵まれて、側から見たら幸せで自由な老後を送っているようにも見えるけど、実際はそう甘くないのが人生なんだなと。
一切出てこない桃子さんの息子は大学を中退してから絶縁状態だし、近くに住む娘が訪ねてくるのはお金に困った時だけ。
時折息子の幼い時の記憶を思い出しながらも「もういないものと思っている」と人に言ったり、息子のフリをしたオレオレ詐欺に引っかかってしまったりと、息子もことをどうしても忘れられない桃子さん。いつか彼がフラッと帰ってきてくれるといいね。
夫とは仲良かったんだろうけど、夫が死んで誰からも必要とされなくなってしまった桃子さん。付き合いがいいわけでもなく、古代の生き物好きという変わった趣味を共有できる人もいない。
夫が死んで「自由になった」というけれど、夫の死を受け入れて前に進むために自分に言い聞かせていることでもある。
切ないけど事実。同じ立場だったらわたしこんなに強く生きていけるかなー、と思ってしまった。
まとめ
正直、映画よりも本で読んだ方が面白かっただろうなーと。映像にするとちょっと「???」なシーンも多かったので。
冒頭にも途中にも、恐竜やら原人が出てきて謎だったけど、個人的には違和感しかなかった。笑
重くなりそうなテーマをコミカルに見せるための演出でもあったのかも。
日常を描いているから大した出来事もないし淡々と進むストーリーだけど、ここまで抑揚がないのに2時間以上の長さがあるとちょっと飽きちゃう…
でも、ラストに孫が訪ねてくるところはなんかグッときたなー。孫との会話、自分は確かに何かに影響を与えていて、それは何世代にも続いていくかもしれないんだっていう未来への希望と自分の人生に対しての誇りみたいなものを感じさせるシーンだった。(実は深い)
桃子さんが毎朝作る目玉焼き。焼くときに水を入れて蒸らすのを見て不思議がっていた、うちのカナダ人夫。
今作を観た次の日の朝ごはんには、水で蒸らした目玉焼きを作って食べました。笑
評価
☆星 3.2 個/ 5 個☆