多くの映画と同様今作も公開が延期され、日本ではクリスマスに公開。
『2分の1の魔法』以来、ギリギリ2020年内に公開となりました。(でもプラットフォームはディズニープラスのみ。)
公開前から「超感動作」として話題になっていた今作は、アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞。前年の『トイストーリー4』に続いての受賞となりました。
公開された2020年、自分ではどうしようもない混沌の中で何かとネガティブになりがちだったけど、「焦らなくて大丈夫」と背中を押してくれるような、そして自分も悩んでいる誰かの背中をそっと押してあげたくなるような作品だったと思います。
『トイ・ストーリー』や『モンスターズ・インク』みたいなファンタジーの世界を描くことが得意なピクサーが、今回は人間達のリアルな世界を題材にしているのは新鮮だった(ソウルの世界はファンタジーだけども)。
今作はどちらかというと子供向けではなくティーンから大人向け。家族との関係や夢と現実の葛藤など、深みのあるテーマが散りばめられているので、むしろ酸いも甘いも経験してきた大人が泣ける作品かと。笑
今作はディズニープラスでの限定公開。(少なくともわたしの住んでるカナダでは)
『ムーラン』と同様、話題性はあるもののディズニープラスの会員にならなきゃ見れないのがちょっとネック。でも、最近ディズニーが次から次へと新作の案内をしているので(『スターウォーズ』系列のスピンオフとか、マーベルのスピンオフとか)、これを機に登録するっていうのはありかも。
ちなみに、わたし今作を英語で観たので、以下の感想で使っている単語が日本語版と違う場合があるかもしれません…
あらすじ
ジャズピアニストを夢見る音楽教師ジョーは、ある日憧れのミュージシャンとショーへ出演するチャンスを得る。浮かれ気分で街を歩いていたところ、マンホールに落ちて命を落としてしまう。
自分の死を認められないジョーは、自分の体に戻ろうとソウルの世界で奮闘する。
キャスト
ジョー・ガードナー【ジェイミー・フォックス】
View this post on Instagram
ニューヨークで音楽教師をしているが、本当はジャズピアニストになることを夢見ている中年男性。
どこにでもいそうな普通の中年男性。笑
ピクサー初?の黒人主役キャラ。ジェイミー・フォックス(『マイアミ・バイス』、『キングダム』など)が担当している声が素敵。
いい人なんだけど、どこか鈍臭い感じが愛おしいキャラクター。ジョーが住むニューヨークのメインキャラはほぼみんな黒人で、そのコミュニティの雰囲気の描き方がいい感じだった。
22【ティナ・フェイ】
View this post on Instagram
パーソナリティが見つからず、誰よりも長くソウルの世界に留まっているソウル。
こんな人いるよなーって感じの怖がりで、誰もが抱えているような未来への不安を代弁してくれるような捻くれ者のキャラクター。
最初、少年のような見かけの22の声がティナ・フェイ(『ミーン・ガールズ』、『シスターズ』など)っていうのはなかなかしっくりこなかったけど、ソウルにはそもそも性別も年齢も関係ないからどうでもいいんだよね。*1
〜ここからネタバレあり〜
感想【ネタバレあり】
良かったところは色々あるんだけど、特別何が良かったかと言われると難しい作品。映画というよりも、本で読むようなストーリーだったと思う。
正直、個人的には「ネットフリックス映画」的な雰囲気を今作には感じました。(映画館で見る作品っていうよりもテレビ映画的な)だからって悪いわけでもなく…でもスペシャル感は無い、という感じ。笑
独特なキャラクター
観始めて真っ先に気づいたのは、CGアニメーションのクオリティ。この手の技術の進歩には毎度驚かされるんだけど、今作も細かいテクスチャの描き方がすごい!
最初のシーンでジョーが着てたセーターとか、街中での日差しの感じとか。キャラクターにはアニメらしい愛嬌がありつつ、背景や小物の素材感がすごくリアルでそこに感心しっぱなしだった。
ソウルの世界はネオンとパステルの世界で、キャラクターも日本のアニメみたいなタッチだったのが印象的だった。ジョーのソウルは本人そのままでかわいかったけど、
お気に入りは、ムーンウィンド率いる「ゾーンに入っちゃってるソウル達」!個性的で、でもありえそうで(カリフォルニアで瞑想中の女子とか笑)面白い!
ソウルの世界で働くピカソの絵みたいな人達、ジェリーやテリーのキャラは独特で面白かったけど、やけに人間味のあるジョークとかにはちょっと違和感。好みの問題かな。
ジョーと22がニューヨークの街に落ちたときの、猫のジョーとジョーの22のドタバタは笑えた。教子とか、美容院での会話とか、お母さんとのやりとりとか、日常
2020年と今作
2020年にふさわしいっていう人が多いみたいだけど、当然の生活を当然のように出来ることがいかに幸せか、特に今年はいつにも増して感じたから*2その意味では作品のメッセージとマッチしていて納得。
でも、自分のことがよくわからなかったり、不確かなことへの「恐怖」で先に進めないことってどんな時でも誰にでもあるし、それに悩まされている人ってすごく多いと思う。22がまさにそれなんだけど。
今作が言いたいことって、つまりは情報やものの選択肢に溢れているこの時代、たまには立ち止まって、日常に感謝しようっていうことなんじゃないだろうか。
ソウルの世界の仕組み
公開前から超感動作であることは聞いてたから泣く準備をしていたわたし。でも、結局泣くよりも先に頭で色々考えてしまった。(つまりは泣けませんでした)笑
どちらかというと好きな作品ではあったんだけど、細かいところに疑問も残る。特にソウルの世界の設定について完全に納得出来ず(わたしの理解が曖昧だったのかも)。
ソウル達が地球に降り立つ準備のために集める「パーソナリティ」は何なんだろうか、22の「パーソナリティ」はなんだったのか。てか、そもそも何が基準で地球のバッジもらえるの??単純に心の準備ができたってこと??
今作だと、パーソナリティ(or生きる目的?)は生まれる前にベースがある程度決まってるっていう設定だったと思うんだけど、だったら一つ一つのピースが何なのか説明してもいいような。制作側的には「そこは自分で考えて」って感じなんだろうけど。(作者側も明確な事言いづらいテーマだしね)
わたしは何かに対する「ときめき」みたいなものが、あのバッジだったんじゃないかと勝手に思っています。
わたしは、作品の世界観を隅々まで知りたいタイプなので、ソウルの世界の仕組みをもうちょっとちゃんと説明してもらいたかったかも。(もちろん、あえて言わないっていういともわからなくはないが)
魚の話
最後に、せっかく夢が叶ったのに思ったよりも幸せを感じなかったジョーに、サックス奏者のドロシーが魚の話をするんだけど、その話がものすごく深い!
ある魚は、年上の魚に「僕はみんなに”海”と呼ばれているものを見つけたい。」と言う。「海?」年上の魚は言った。「僕らが今いるのが海じゃないか。」。すると、若い魚は「これは」と続ける。
「これは水だよ、僕が欲しいのは海なんだ!」
この若い魚の言いたいことすごくよく分かる。気持ちばっかり逸ってしまって、とにかく今と違う場所に行かなければって自分を追い込んでしまったり、逆に今いる場所の素晴らしさに気付かずに文句ばかり言ってしまったり。
この魚の話は忘れられない。ドロシーのこの言葉が作品全体を一段と素敵なものにしていたと思う。
まとめ
最近のピクサーは、今までのワクワクファンタジー系から、ちょっとエモーショナルでディープな、感情に訴える大人向け作品が多くなってきた気がする。
作中に出てくるジョークも大人じゃなきゃ分からないようなのが多かったりして、ターゲットが変わってきた(というかその幅を広げてきた)のかなーと思ったりもする。
これはこれで良いんだけど、やっぱりわたしは『トイ・ストーリー』とか『モンスターズ・インク』みたいな子供向け映画が好き!笑
評価
☆星 3.6 個☆
※悪いところは特にないのに、特別何がいいってわけでもない。
※ピクサーらしくない大人の作品。でも、何かと考えさせられる良作だった。