探偵Lの映画ブログ

カナダ在住の映画&ドラマオタクが探偵気分で映画をレビューするブログ

【ネタバレあり】Netflix『ザ・サーペント』ビキニキラーとも呼ばれた連続殺人犯シャルル・ソブラジの実話が基になったドラマ

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アジアを旅するヒッピー旅行者を狙って強盗と殺人を続けた連続殺人犯シャルル・ソブラジをモデルにしたNetflixのオリジナルシリーズ。

 

面白い!!

 

こちらカナダでは、公開以来ずーっとトップ5をキープしていました。

シャルルはフランス人、共犯の恋人はケベック系カナダ人ということで、作中の言語は英語70%、フランス語30%くらいの割合。フランス語が第二共通語であるカナダ人が観るにはぴったりなシリーズだったのかも!?

 

Netflixオリジナルにしてはクオリティが高く(え)、70年代のファッションやカルチャーもすごくうまく再現していたかと。当時の実際の映像とそれを再現するようなフィルターを使った演出も面白かったし、ハラハラドキドキするストーリーとコロコロ変わる時系列で先が気になる展開になっているので、すっかりハマってしまいました!

 

東南アジア(主にタイ)が舞台だから旅行気分も味わいつつ、南国ならではのムンッとした熱気が感じられるような演出の数々(ファッション、文化、建物など)も見所。

事件自体は怖いけど、東南アジア行きたくなった…

 

追記です…

主人公の殺人鬼シャルル・ソブラジが2022年末に釈放されました!!

なぜ??どして??一生監獄暮らしだと思ってたこの人。。。

 

 

 

あらすじ

東南アジアを中心に数々の強盗殺人を続け逃亡していたシャルル・ソブラジをモデルにしたストーリー。

オランダ人カップルの失踪を機に、シャルル達一行による連続殺人に気付いたオランダ大使館員クニッペンバーグが、仲間と共にシャルル逮捕に奮闘する。一方シャルル達は身分を偽り、アジア各国を転々としながら次々と犯行を続けていた。

 

登場人物・キャスト

シャルル・ソブラジ【タハール・ラヒム】

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アラン・ゴーティエ として宝石商を装い、旅行者を狙った連続強盗殺人犯。被害者の発見時の服装から、ビキニ・キラーなどの異名をもつ。

 

母はベトナム人、父はインド人。幼少期にベトナム戦争の混乱を経験したあと母の再婚によりフランスへ移住。ヨーロッパでは肌の色の違いから人種差別を受け、両親からも愛されずに育った。その後もちろんグレ始め、若い頃から犯罪に手を染めていた根っからの犯罪者。

 

作品内ではシャルルは昔から悪い人間で「愛するのは難しい」って母親が言ってたから「悪いのは全部シャルル」みたいになってたけど、元夫似だったシャルルのことを勝手に嫌っていた母と、連れ子だからってまともに面倒を見なかった義理父からの愛情不足も屈折した性格の原因だろな。

 

ベトナム戦争のトラウマ、差別、母の再婚でボロボだった悲しい過去に蓋をして、強く生きていこうとしたんだろうけど、そのベクトルの向け方をどこで間違えてしまったんでしょう…

 

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言葉巧みに人を操る詐欺師的な才能もあったんだろうけど、パッと見かっこいいしカリスマ性もあったから女性にモテたはず。(シャルルに宝石を売っていたタイ人恋人のスガちゃん【チチャー・アマータヤクン】めちゃくちゃかわいい!Netflix新作『転校生ナノ』では主役を演じています!)

 

その魅力と知能をもっと別の方向へ向けていれば今頃ビジネスで大成功していただろうと思わずにはいられないタイプの極悪犯罪者(テッド・バンディとかも)ってたまにいるけど…彼もその典型。

 

後半は自分から警察に捕まりに行ったり、ただの目立ちたがりおじさんになっていた気が。

現在はネパールの刑務所に服役中。

 

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演じたのはフランスの作品を中心に活躍中のタハール・ラヒム。シャルルの若い頃から中年までの演じ分けも上手かったし、穏やかな表情に隠れたの残虐性を感じさせる無機質な演技はすごくよかった!

出演作:『プロフェット』など

 

ただ、インド系・東南アジア系でもフランス語話す良い役者さんいただろうに、なぜかフランス系アルジェリア人の彼を起用して、肌もわざわざ褐色にしていたのには若干違和感あり(白人が黒塗りして黒人役やったら叩かれるのにこれはいいんだ…ていう笑)。

 

マリー・アンドレ・ルクラーク【ジェナ・コールマン】

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シャルルと行動を共にし、彼の妻モニークとして犯行に関与(殺人については否認している)したケベック系カナダ人。

今作ではシャルルに振り回されたちょっとかわいそうな女性、みたいに描かれている部分があるけど、少なくともかなりの数の犯行に関与・黙認してきて常にシャルルについて回っていたんだから、彼女も立派な共犯だと思う。

 

典型的、ダメ男にハマるタイプ。確かに詐欺師のシャルルにうまく利用されていた部分はあっただろうけど、モニークを演じる自分にある意味酔ってたんじゃないかなー、と思う。

逮捕後には癌が見つかり数年後にカナダで死亡。

 

 
 
 
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演じたジェナ・コールマンはイギリス人だけど、この役のためにケベックフレンチを特訓したらしい。(ケベック人夫によるとケベック訛りは感じなかったとのこと…)フランス語を話す人からしたら彼女のフランス語は違和感かもしれないけど、英語にアクセント入れて話すところとか結構うまかったとわたしは思う。

 

フランス語で難しい役を演じていたのに、演技が素晴らしかったです。日本人好みの童顔がかわいい。笑

マリー・アンドレは内気でモテない女性って感じなのに、どこからどう見てもゴージャスな美女であるジェナが演じているのはちょっと違和感。

作品に華を添えてはいましたけど。

 

個人的には彼女のファッションも見どころだったかと!!

出演作:『女王ヴィクトリア 愛に生きる』、『ドクター・フー ニュー・ジェネレーション』など

 

ヘルマン・クニッペンバーグ【ビリー・ホール】

 
 
 
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オランダ大使館で働くタイ駐在の書記官。

オランダ人カップルの失踪事件を追ううちにシャルル達の犯罪に気付き、彼らを追い始める。

 

ヘルマンみたいな熱くて執念深い人がいなければ、シャルル達の犯罪は止められなかったかも知れない。そのピュアな熱意と生真面目さは、七三ヘアにも現れてる。笑

 

大使館って結局お役所仕事だし、現地では波風立てずに慎ましく、国に恥じないよう振る舞うのが役目ではあるんだろうけど…事情を知りながら何もしなかった各国の大使館の対応にびっくり。

 

初めは乗り気じゃ無かったベルギー大使のツンデレ熱血親父ポール【ティム・マッキナニー】にお世話してもらいながら、シャルルの友人夫婦ナディーン【マチルダ・ワーニエ】とレミ【グレッグ・イザヴァリン】の協力を得て、根気よく証拠を集めていくヘルマン。

 

フランス人夫婦の活躍も要。ナディーンのおとぼけスパイ具合もかわいい。笑

シャルルに雑用として使われたドミニクの帰国を助けるシーン、その後シャルルに問い詰められるシーンは特にハラハラドキドキ!!

 

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ヘルマンの妻アンジェラ【エリー・バンバー】は、ベイビーフェイスな見た目に寄らずしっかり者で、夫を引っ張る強く賢い女性。

 

でも、ヘルマンの執念が彼自身の精神状態と仕事、結婚生活にまで影響してしまうことに…

この二人の組み合わせは見てて微笑ましかったけど、後半事件に没頭していくヘルマンに振り回されるアンジェラがかわいそうだったなー。

 

ちなみにリアルのアンジェラはヘルマンと離婚後、国連の事務局長にまでなったすごい女性。

タイで専業主婦やってるにはもったいない人材だったのね。

 

 

まとめ

 

時代背景

ヒッピーや大麻が蔓延していた当時の欧米。

資本主義に対抗するラブ&ピースな若者達が、こぞってアジアを訪れていた70年代。

 

シャルルが欧米からの旅行者について「彼らはアジアでの短期間の経験をアクセサリーのようにまとって、わかったような口を聞く。」って言ってるシーンはやけに頷けてしまった…苦笑

 

とりあえず観光地巡りして、それ以外は欧米人だらけのモーテルに泊まってハッパ吸って過ごして、現地の現実なんて知らないまま表面的な経験を持ち帰るだけのお気楽な欧米人。シャルルは彼らをそう見ていたのかも。

でも、だからこそシャルル達には絶好の獲物だったはず。

 

パスポートの偽造も簡単に出来てしまうような時代だったから、なりすましとか詐欺とか、海外での失踪事件とかも今以上にいっぱいあっただろうなー。

 

海外で同じ言葉を喋る人に出会うと急にガード下ろしてしまうってよくあるけど、その相手を間違うとこの事件の被害者たちの様になりかねないということですね。他人からもらった食べ物や飲み物には注意しましょう。笑

 

動機

正式な動機についてはいまだに分かっていないけど、被害者のほとんどが白人旅行者っていうことを考えても、動機には彼が受け続けてきた人種差別の影響が大きく関係していそう。

 

確かに有色人種の差別は今でも根強いし、ベトナム戦争直後のフランスでは余計シャルルのような「白人じゃない人」はターゲットにされやすかったんだと思う。

 

作品内でもシャルルが白人への嫌悪をあらわにするシーンは度々あるし、ジュリエットとの結婚式で相手の家族に白い目で見られたり、電話でやりとりしていたフランスの宝石商にも人種を理由に取引を断られたり、観てるこっちまで不快になるような理不尽な人種差別を受けること多数。

 

特に凶悪犯には幼少期のトラウマが大きく関係しているっていうけど、シャルルの場合もそうだと思う。

彼の場合は、親からの愛情不足とフランスでの悪質な人種差別だったのかもしれない。

 

子供産まれて「娘も肌の色で差別されるからフランスを出よう。」とか言ってたけど、その後のキャリアを完全に間違えたね。家族が出来ても公正出来なかったのは、ある意味犯罪のスリルを楽しんでいたからなんじゃないかなー。(捕まっても脱獄繰り返したりしてるし)

その反骨精神を犯罪に向けないで、ビジネスに向ければ良かったのに…

 

妻のジュリエットも超美女だけど変な人だよね。

一番最初シーンでテレビのインタビューに答えるシャルルの姿が気味悪いと思ってたけど、最後に結局ジュリエットとヨリ戻してる所の方がゾッとした。

(実際のシャルルは逮捕後に通訳&弁護士をした超年下女性と結婚しています…何これ。)

 

最終的に…

 クニッペンバーグは正義のために何年も頑張って来るけど、ある意味この事件とシャルルに取り憑かれておかしくなってしまうっていうのが悲しい所。

世の中、良いことをしようとする人の方が意外と損したりするのよ…

 

シャルルの右腕だったアジェイ【アメシュ・エディアウィーラ】はタイでのほとんど全ての殺人に関与している(疑いがある)のに結局捕まってないし、行方もわからないまま。一番得したのはこの人かも。

 

どこかで週一で下痢になる呪いにでもかかり、出来る限り惨めに生活していることを祈ります。

ちなみに、アジェイ役アメシュ・エディアウィーラの絶妙な胡散臭さとウザさは最高だった。笑

 

収監後は何度も脱獄を続けているシャルルですが、おじいちゃんとなった今ではさすがに死ぬまで刑務所から出られないことでしょう。

このストーリーのベースはクニッペンバーグVSシャルルではあるけど、お互いの存在を知りながらも顔を合わせることが無いっていうのはある意味面白かった。クニッペンバーグの執念がシャルル逮捕につながった。これだけは間違いない。