探偵Lの映画ブログ

カナダ在住の映画&ドラマオタクが探偵気分で映画をレビューするブログ

【実際の事件詳細&悲しすぎる主人公のその後】Netflix『ロストガールズ』実在の未解決事件と被害者遺族のストーリー。事件の詳細や犯人像を考察。

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2023年7月14日、ついに容疑者逮捕!!

ニューヨーク州のロングビーチ在住の59歳の男性が逮捕されました。マンハッタンで働く妻子持ちの建築家だって。

全ての被害者ではないですが、2010年以降の4人の殺害に関与していた疑いがあるそう。

DNAと、事件当時使っていた使い捨て携帯の情報から特定されたそうです。

 

犯人候補として聞いたことのない名前の人だったから、捜査中に浮上してきたんでしょう。

でも、遺体が発見された被害者全員がこの人の犯行かどうかはまだわかりません。

 

この事件知って気になった人は、ぜひこの映画観て欲しい。

観なくても、このブログで詳細を解説してますので、是非知って欲しい。

この事件、すごく心に残っていて、被害者家族のその後も含め、やっと前進したんだと思うと胸がいっぱいになりました。

泣きそう、、

 

以下の記事は、逮捕前(2020年6月)に書いたものです。

 

 

ロバート・コルカーのベストセラーノンフィクション『Lost Girls: An Unsolved American Mystery』を元にしたネットフリックス映画。

原作ずっと読みたいと思ってたんだけど、オススメでこの映画を見つけたからまず見てみようかと。(もう本読まないパターンでは…笑)

  

「行方不明になった女の子の話」くらいの前知識しかなかったんだけど、あのL.I.S.K事件の被害者の話だったとは!! 

 

ロングアイランド連続殺人事件(通用L.I.S.K)はアメリカでは割と有名な未解決事件で、20人近くの遺体がここ数十年間確認されているものの、犯人はまだ捕まっていません。

(事件についての詳細は以下でもっと詳しく。※ネタバレ含みます※)

 

殺人事件の犯罪被害者遺族にまつわるストーリーなこともあって終始暗い作品だけど、サスペンスというよりは家族の絆と被害者家族の葛藤を描いた映画だったと思う。

 

実在の事件を掘り下げた記事↓↓

mobayuri.hatenablog.com

mobayuri.hatenablog.com

mobayuri.hatenablog.com

 

 

 

ストーリー

実家を訪れるはずだった娘のシャナンが現れず、行方を探す母メアリー。警察に通報するも、シャナンが売春婦であることが分かるとまともに取り合ってもらえない。

メアリーは諦めず、娘たちと自らシャナンの捜索を始める。その後、シャナンが姿を消したロングビーチで複数の人骨が見つかり、売春婦*1をターゲットにした連続殺人が起きていたことが明らかになる。

 

 

 

キャスト

メアリー・ギルバート【エイミー・ライアン】

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行方不明になったシャナンの母で、3人の娘を持つシングルマザー。

 

かわいい女優さんのイメージだったけど、やつれた強いシングルマザー役をかっこよく熱演。

実際にシャナンの母メアリーは精力的に娘の捜査を行い、それが連続殺人が明らかになるきっかけにもなった。

現在は亡くなっています。詳しくはこのあとの「ギルバート家について」を読んでください。

出演作:『ブリッジ・オブ・スパイ』など

 

シェアー・ギルバート【トーマサイン・マッケンジー】

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シャナンの妹でメアリーの次女。シャナンのことを「ディーバ」と呼び慕っている。

 

ニュージーランド出身の若手女優。

実在のシェアー本人は、引き続きシャナンの死の真相を知るために活動している。

出演作:『ジョジョ・ラビット』など

 

リチャード・ドーマー【ガブリエル・バーン】

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ロングアイランドエリアの警察長官。

 

アイルランド出身、元教師の遅咲き俳優。渋い演技がストーリーの雰囲気に合ってた。

実在のドーマー長官は退職後2019年に亡くなった。

出演作:『ミラーズ・クロッシング』など 

 

 

 〜ここからネタバレあり〜

 

 

 

 

 

勝手に捜査官【事件の概要(劇中と異なる事実&劇中にない事実あり)】

ロングアイランド連続殺人事件

シャナンが行方不明となった際に明らかになったロングアイランドビーチの事件は、Long Island Serial Killer事件、一連の事件の犯人は通称L.I.S.Kもしくはギルゴ・ビーチの殺人鬼と呼ばれています。

 

同じエリアで、過去20年の間に殺されたとみられる10人分以上の遺体(時間が経っているため遺体の状態が悪く一部しか残っていない遺体もあるため正確な数はわからない)が発見されている。

被害者の多くは、売春婦として働いていた若い女性がほとんど。

 

ロングビーチ、ギルゴビーチはニューヨーク州サフォーク郡内にある郊外の住宅地が多い地域。ビーチといえど、砂浜が広がる海水浴向けの場所ではなく、藪が生茂る湿地帯。

マンハッタンからは車で約2時間ほど離れている。

 

 

 

時系列

2010年5月

シャナン・ギルバートがロングアイランド(ギルゴビーチ付近)で行方不明になる。

2010年11月

ギルゴビーチ付近でパトロール&訓練中だった警察犬(名前はブルー)が偶然遺体の一部を発見。

その後4人分の遺体が同じエリアで発見され、付近に連続殺人犯が存在する可能性が浮上。

みなクレイグスリスト(ネットのクラシファイドサイト)に広告を載せていた行方不明中の売春婦だった。

この4人の被害者は「ギルゴビーチ4」と呼ばれる

2011年3月

ギルゴビーチ付近でさらにもう一人の遺体の一部を発見。

この被害者は、2003年に同州内の別の場所で発見された遺体の一部と一致。

2011年6月

さらに女性、幼児、若いアジア人男性の身元不明遺体を発見。

その後さらに、幼児の母とみられる女性を含む二人の遺体を発見。

一人は1996年に遺体の一部が発見された女性のものと一致。

2011年12月

オークビーチでシャナン・ギルバートの遺体を発見。

警察は、シャナンの死と連続殺人事件との関連性は不明としている。

 

犯人像

・そもそも一人の犯人による犯行かどうかも不明で、「単独犯による犯行説」と「複数犯による犯行説」がある。複数犯説については、複数の単独犯か複数人による共犯かは不明だが、少なくとも3人以上が関わっているとの考えもある。

(また、遺体の全身が見つかったギルゴビーチ4と、バラバラにされていたその他の被害者は別々の殺人犯による被害者、もしくは犯人が犯行方法を変えたからだとの説も)

 

・犯人は高い報酬額を提示して売春婦達を誘い出していた。

売春婦と連絡をとっていたクレイグスリストの広告上で使われていたアカウントの使用時はIPアドレスを隠していた。スマートフォンが普及し始めたばかりの当時、IPアドレスを操作するには技術的な知識がなければならなかった。 

 

・被害者の一人メリッサの行方不明時、犯人はメリッサの携帯から彼女の妹に電話をかけている。

メリッサ自身と妹の情報をよく知っているような内容や、メリッサ殺害までの様子等を話したという。(黒人と白人のハーフだったメリッサのことを「雑種」と読んだり、「ついにメリッサを殺したよ」と連絡してきたらしい。気持ち悪過ぎ。)

犯人からの電話は複数回に渡ったが、会話は全て警察が追跡できない長さ(90秒以内)な上、人混みの中(マンハッタンなど)からかけられているため特定不可能だった。メディアが報じたことで止まってしまった。

 

上記のことから、犯人は警察関係者もしくは警察の捜査方法についてよく知っている人物・集団だという見方もある。

 

具体的な容疑者

現段階では有力な容疑者は公表されていないものの、過去に関与を疑われた人物(今作の登場人物を含む)は複数存在する。

 

ピーター・ハケット医師

ギルゴビーチエリアに住む医者。

付近で起きたいろいろな事件に首を突っ込んで騒ぎ立てるタイプの人物として有名だった。母メアリーの電話番号を知っていた(「シャナンが行方不明となっていることは知っていますか?」と電話したらしい)ことから、シャナンと何らかの関係があったと見られる。また、シャナンの遺体はハケット医師の自宅の裏で見つかっているが、警察は彼を容疑者から外している。

 

 

ジェームズ・バーク

遺体が見つかったサフォーク郡の元警察署長。関係を持った売春婦からの証言により、当事件の犯人として追及されている。汚職にも関わっていたと見られ、辞職後は暴行事件でも有罪となっている。

また、署長当時に当事件へのFBIの関与を意図的に阻止したとも言われている。

 

 

ジョン・ビトロールフ

売春婦二人の強姦殺人容疑で有罪となった殺人犯。

彼の娘はメリッサの妹の親友だったため、行方不明後に妹に電話をかけてきたのはジョンではないかという説(電話の相手はマリッサについてよく知っていたから)がある。

2017年9月、サフォーク郡検察官はビトロールフが少なくとも一人の被害者殺害の容疑者であると述べた。

 

 

その他

シャナンの死体発見直後に自殺した男性が、遺体を包んでいたものと同様の麻袋をサプライしている会社を所有していたため、事件の関連を疑われた。

他には、売春婦を襲おうとして正当防衛のために殺された別の男性の車内から、手錠やオノなど不審な物が見つかり、関連を疑われた。

 

現在、どちらの人物も容疑者にはなっていない。

 

 

 

この事件関連の作品

この映画の原作はニューヨークタイムズのベストセラーになった『Lost Girls: An Unsolved American Mystery』ですが、他にも多くのドキュメンタリーや本が出版されています。

(作者は元ニューヨークマガジンのジャーナリスト、ロバート・コルカー)

 

でも、個人的なオススメはポッドキャストの『LISK』。

英語ですが、会話口調で遺族や友人のインタビューがメインの内容なので、興味があればぜひ。

番外編として今作原作者のインタビューもあり。本の執筆中にシャナンの遺体が見つかったため、本の内容にも影響したという話も。この記事にある詳細もこのポッドキャストから得た情報が含まれています。

www.liskpodcast.com

 

ここでは、シャナンだけでなく他の被害者についても触れていて、遺族や友人のインタビューも踏まえながら、公表されていない容疑者についてまでも触れています。(結構攻めた内容)

 

 私が初めてL.I.S.K を知ったのもポッドキャスト。

こちらも分かりやすく、1時間程度のエピソードにまとめられているので聞きやすいはず。

crimejunkiepodcast.com

 

 

ギルバート家について

行方不明となったシャナンと母、シャナンの二人の妹たちが今作でのメインキャラクター。

 

劇中でも話題となるが、シャナンは高校を飛び級して卒業する頭脳明晰な女性で、アートの才能も兼ね備えていた。アートを学ぶ学校に通うお金を稼ぐため、売春婦を始めたそう。

 

実は事件当時彼女たちの他にも家族がいた。

メアリーには実際は4人の娘がいて、サラの下には四女のスティーヴィーがいる。 また、三女サラには当時の恋人との間に幼い子供がいた。

 

作品の最後に出てくるように、サラは統合失調症とドラッグ依存に苦しんでおり、メンタルブレイクダウンを起こして母メアリーを殺害。

メアリーは当時サラの精神状態を案じて孫(サラの息子)の世話をしていたそうだけど、母が悪魔に取り憑かれていると信じ込んでいたサラは、メアリーを消火器で殴打しナイフで刺し殺してしまう。メアリーには227箇所の刺し傷があったそう。(サラは現在25年を求刑され服役中)

 

悲しすぎるメアリーの最後。

 

それまでのサラは妹の面倒見も良く、メアリーに頼りにされる存在だった。思慮深い性格でシャナンの事件についての詳細をノートに書き出し、精力的に情報を集めていた。

しかし、事件当時のサラはシャナンの死を到底受け入れられる精神状態では無かった。

 

過去に、次女シェアーと三女サラは母の元恋人から虐待を受けていたことがあり、そのトラウマに悩まされていた。

サラは、ティーンエイジャーの頃に中絶を経験し、その後高校を中退。年上の恋人と子供を授かり家族を築いていた。しかし、シャナンが行方不明となった当時は恋人からの家庭内暴力に苦しんでおり、姉の遺体が見つかったショックとその死因が疑問視され始めたストレスで、あらゆるトラウマを抱えた彼女の精神状態は限界に達していた。

 

メアリーの存在を心の支えにしていたサラだったが、その後幻覚や幻聴に悩まされるようになり、統合失調症の診断を受け入退院を繰り返す。子供を育てられる状態ではなくなってしまい、投薬を拒否してドラッグを乱用するなど適切な治療を受けていなかった。

 

シャナンの事件だけでも大変なのに、サラの精神状態が不安定になったことでメアリーとシェアーの負担は計り知れなかったはず。度重なる悲劇に見舞われた彼女達。

でもメアリーは最後まで、娘のために人生を捧げた頼れる強い母だった。

 

 

※上記の情報は『ロストガールズ』の原作者による以下の記事から要訳しました。

www.thecut.com

 

こんなに悲しい話聞いたことない…

 

勝手に捜査官(個人的な意見)

謎が多過ぎて全く容疑者の目処がつかないこの事件。

個人的には全部が一人の犯行では無いと思う!

 

でも、被害者の少なくとも一人は殺人犯のジョン・ビトロールフの被害者だと言われていて、(過去に数十人の被害者を出した殺人鬼もいたわけだし)彼が一人で全員を手にかけた可能性も全然ある。そう考えたら全然わからない!

 

偶然過ぎるけど、ギルゴビーチエリアがビトロールフと他の殺人犯の遺棄場所だったのか、ビトロールフに共犯がいたのかも。

 

現時点では同じエリアで新しい遺体は見つかっていないわけだから、もしかしたらビトロールフが捕まって止まったのかもしれないし、ただ犯人が遺棄場所を変えただけかも。それに、古い遺体は約20年前のものだし、もしかしたら犯人はもう高齢で犯行をやめているかもしれないし、死んじゃってる可能性だってある。

 

ハケット医師は確かに怪しいけど、連続殺人鬼ではないと思う。

シャナンの母の電話番号を知っていたから何らかの関係はあるだろうし、お節介すぎる性格から、もしかしたらジョーから逃げていたシャナンを助けて結果事故か故意でシャナンを殺してしまったのかもしれない。

 

シャナンの事件が他の被害者の発見に繋がってはいるものの、個人的には彼女自身がLISKの被害者では無い気がする。

 

こんなに全く何の予想もできない事件無い!!

でも、ここまで多くの被害者を出して20年近くも逃げ続けている人がいるなんて恐ろしいわ。

 

最近になって警察は、犯人のものと思われるベルトの写真を公表していたけど、まだまだ公表されていない重要な証拠やDNA情報はあるはずだし、一刻も早く犯人が捕まることを祈ります。

 

 

 

感想【ネタバレあり】

 

実話ってこともあって、最後まですっきりしないしハッピーエンドでもない作品。 

でも、それが実話作品の醍醐味でしょ!犯人が捕まってない事件だし、被害者家族の戦いは1時間半の映画で気持ちよく終わるわけないよ!

 

被害者が売春婦っていうことへの偏見で、大した捜索もされない現状。育った環境への差別もあって、親に責任がないわけじゃ無いけど、貧困だったりシングルマザーの家族だったりして

連続殺人鬼の存在がメディアで騒がれたから注目されるものの、エンターテイメントのように事件を騒ぎ立てるマスコミにコマのように扱われる被害者が不憫。

 

職業のイメージの問題はあるかもしれないけど、それだけで警察の対応が変わってしまうものなんだな。

この被害者たちも、危険が起こり得ることを知りながらもどうにか生活を支えるために働いていたんだし、どんな仕事をしていようと自分の家族がこんな目に遭ったら自分だって黙ってられないよー。

 

ギルゴビーチエリアの映像を見てると、ニューヨーク州といえどマンハッタンとは大違いの人影少ない寂れた住宅地って感じ。全然ビーチ感も無いし。

シャナンの遺体が見つかったエリアなんて、到底好きで足を踏み入れる人はいないだろうって感じの気味悪い区域。

 

こういう事件見てると、正直、人里離れた何も無い場所(林やら藪の中やら)にどれだけの死体が隠されているんだろうかと思ってしまう…笑 

 

今作では、未解決なのは警察の怠慢が関係ありそうな雰囲気だったけど、メアリーと対立してたドーマー総監は結局はいい人なんじゃないかって思っちゃったな。

あの手の枯れ系おじさんにはいつも同情しがち。笑

 

被害者家族みんなが何かしらの悩みを抱えていて、貧困等の苦しいサイクルから抜け出せない家族の葛藤にも胸が痛くなるけど、最後まで娘のために悪者にもなる強い母メアリーのカッコ良さと、不器用に支えながら強くあろうとする女性達のパワーが感じられるストーリーでもあった。

 

よくある連続殺人事件映画と違って、今作は終始被害者の目線で被害者の立場でストーチーが進んでいくってところが今作の良いところであり、暗いストーリーになっている理由だと思う。

でも、注目されるべきは殺人犯じゃない!被害者たちだ!って言うメッセージを感じた。

 

母メアリーが亡くなってたのはショックだなー…

しかも精神状態が悪化していた末娘に殺されてしまった形。後半、リストカットや投薬で疲れ切った皿の姿が出てきて辛くなったけど、度重なる悲劇…

次女シェアーはまだ事件の解明に向けて運動を続けているみたいだから頑張って欲しい!

 

映画を観る前からこの事件の概要は知ってたから、劇中ではいろんな詳細が省かれてたことが残念。でも、1時間半の作品だし、こんなものでしょう。

やっぱり原作本読みたいかも!!

*1:ちょっと差別的な表現ではあるけど、日本語だとそれが一番分かりやすいかと思い、当記事ではこの名称を使っています。