探偵Lの映画ブログ

カナダ在住の映画&ドラマオタクが探偵気分で映画をレビューするブログ

【事実と比較】『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』モデルになった事件について詳細解説。当事者たちのその後は?

 f:id:mobayuri:20210614023122p:plain
わたし普段ホラーは観ないのですが「実話」と言われると興味が恐怖を上回ってしまうのです。笑

こんなことが本当にどこかで起きたのであれば、その背景が知りたい!!

もちろん、映画はホラー要素にフォーカスしており、実際に話題になった裁判や判決については詳しく語られないので、あえてそこにフォーカスしてモデルになった事件について掘り下げてみました。

 

2021年10月1日に公開した『死霊館』シリーズの最新作。

ホラー界の鬼才ジェームズ・ワンがプロデューサーを務め、ビリー・アイリッシュの"Bury a Friend"PVや『ラ・ヨローナ〜泣く女〜』のマイケル・チャベスが監督を手掛けた今作。

 

毎度思うんだけど、悪魔とか呪いとか目に見えない恐怖にも躊躇いなく立ち向かっていくウォレン夫婦は本当にすごいわ。

勇敢というか、怖いもの知らずというか…

 

今作は、知人を殺害した青年が悪魔に取り憑かれたことを犯行の理由として訴えた実在の事件を題材にしています。

youtu.be

 

原題は”The devil mademe do it(悪魔にやらされた)”だけど、 邦題『悪魔のせいなら、無罪』って、タイトルでネタバレしてんじゃん!!てなった。笑 

 

 

事件概要

1980年、11歳の息子デヴィッド・グラツェルに悪魔が取り憑いていると信じたグラツェル家は、ウォーレン夫妻に助けを求める。

ウォーレン夫妻は司祭たちと共にエクソシズム(悪魔祓いの儀式)を行うが、数日間続いた儀式の間にデヴィッドに取り憑いた悪魔が、デヴィッドの姉の恋人アルネ・ジョンソンに憑依してしまう。

数ヶ月後、アルネは大家のアラン・ボーノ(映画内の名前はブルーノ)を口論の末殺害してしまう。アルネの弁護士は「悪魔の憑依」を主張した。

 

実際の事件の経緯

1.デヴィッドの悪魔体験

1980年のウィスコンシン州、グラツェル家は新しく購入した家の掃除に訪れたところ、11歳の息子デヴィッド・グラツェルが心霊体験をする。それを機に、デヴィッドに悪魔が憑依したと思われる。

 

デヴィッドは、家の中で老人男性を見たと言っており、男性はデヴィッドに「気を付けろ」と言うや、主寝室にあったウォーターベッドに押しつけられたと語った。

その後、デヴィッドは夢でうなされたり、体に見覚えのない傷ができたりし始めたため、両親はウォーレン夫妻に相談した。

 

ウォーレン夫妻はその件を深刻に受け止め、カトリック教会に相談。6人の神父と共に悪魔払いを行うことになる。その結果、彼らは43の悪魔が憑依していることを知った。

 

2.アラン・ボーノの殺害

1981年2月、ブルックフィールドでアラン・ボーノ40歳が、飲酒中の乱闘により死亡。

5インチ(約13cm)のナイフ22回も刺されており、そのうち4〜5つは致命傷だった。

 

容疑者は19歳のアルネ・ジョンソン

アルネは事件現場から3キロほど離れたところで逮捕された。彼は逮捕時、事件のことを一切覚えていないと言っていた。

 

その日、犬舎にはアルネの恋人デビー・グラッツェル、デビーの従兄弟で9歳のマリー、アルネの妹ワンダが一緒だった。アランはデビーが働いていた犬舎の管理人でアルネの友人であり大家だった。

 

酔ったアランがマリーの腕を掴んで離さなかったのでアルネが仲介に入ったが、急に動物のような唸り声を出し持っていたナイフでアランを刺し始めたとデビーは語っている。

 

【映画との違い】

*アランが絡んだのは恋人ではなく恋人のいとこの少女だった

 

3.アルネの変化

恋人のデビーは、事件の1ヶ月ほど前からアルネの様子がおかしくなったと言っていた。

 

本人は一切記憶がなかったが、時折唸り声をあげたりトランス状態に陥ったりすることがあ理、デビーは、その様子が1980年に悪魔に憑依されていた弟のデヴィッドと同様のものだったと言っていた。

 

4.裁判

f:id:mobayuri:20211010055629j:plain

アルネ・ジョンソン

ボーノの殺人事件の裁判は1981年10月に始まった。

アルネの弁護を担当したのは33歳の弁護士マーティン・ミネラ

彼は、悪魔の憑依を犯行の理由にしたことについてはウォーレン夫婦からの助言があったからだと語り、「被害者が受けた傷には人間には残すのが不可能なほど深いものがあり、ウォーレン夫妻に悪魔憑依中は本人に意識がないことを聞いてから、そのことを考えずにいられない。」と言っている。

(映画内では、悪魔を信じない女性弁護士がウォーレン夫妻の説得により一瞬で悪魔のせいだと心変わりしています。)

 

ミネラ弁護士は法廷で「裁判所は神の存在を扱ってきたが、今度は悪霊の存在を問われることになるだろう」と語るも、ロバート・キャラハン判事は「無関係で非科学的」としてその主張を即座に却下。

 

それを受けてミネラ弁護士は正当防衛を主張。そのため、陪審員は悪魔払いやデヴィッドの憑依との関係についても一切聞かされずに裁判に臨んだ。

 

5.目撃証言

目撃者の証言によると、事件前アランとアルネの二人はかなり酔っていたと言う。

「3時間の間に13〜15杯のワインを飲んでいた」との証言もあり。

 

事件後に駆けつけた救急隊員は、アルネの恋人デビーが「パパ、アルネにそのつもりはなかったの。彼がお酒を飲むとどうなるか知ってるでしょ。」と話しているのを聞いたと証言している。

 

6.判決

1981年11月、陪審員の15時間にわたる審議ののち、アルネは第一級傷害致死罪で10〜20年の懲役を言い渡される。

(22回も刺してるのに殺人罪じゃないんだ…)

 

しかし、模範囚であったことからわずか5年で釈放

デビーとアルネは1984年(服役中)に結婚。

 

本当に憑依だったのか?

アルネについて、映画内では「物腰柔らかで心優しい若者が悪魔の憑依で豹変してしまった!」みたいに描かれてるけど、実はアルネをよく知る人は「怒りっぽく、女性への独占欲が強い」、「かつて働いていたツリーサービスで、口論のあと小さなぬいぐるみをナイフでズタズタにしたことがある」とも言っていたそう…

 

また、アラン・ボーノ殺害時にはボーノ、アルネ共にかなり酔っ払っていたらしく、その日アルネがステレオの修理を頼まれていたが、その支払いについて意見の不一致があったとも言われている。

映画内では、友人を殺害後のアルネが朦朧としながら道を歩いているところを警官に見つかっていますが、実際にアルネが見つかったのは…近所のパブ

 

また、この事件は地元警察の記録上ブルックフィールドで起きた初の殺人事件。

警察や捜査官も殺人事件についての経験は浅く(おそらくゼロ)、しかも容疑者と思われる人間が「悪魔の憑依」みたいなぶっ飛んだことを犯行理由に反論してきたら、そりゃ困惑したでしょうよ。

経験不足によって捜査が雑でお粗末になっていたとしても全くおかしくないと思う。

 

この事件が起きたのは、ちょうどアメリカ中が「悪魔パニック」と呼ばれる悪魔憑依ブームの真っ只中にいた80年代。ウィスコンシンの田舎町で弁護士が「悪魔の憑依」を犯行理由に訴えたこの事件の噂を聞くと、ワシントンポストやニューヨークタイムズなどの大手メディアまで、すぐに飛びついた。

しかも当時、世間は悪魔をまともに信じていろんな悪行(子供の非行とか)を悪魔のせいにして、それをお祓いするテレビ番組や本も大人気になっていた。

 

裁判の最中も、ウォーレン夫妻はこの事件を題材に映画や本を出版する準備があるとメディアで発言しており、1983年にはジェラルド・ブリットルと『デビル・イン・コネチカット』を出版。

 

当事者たちのその後…

現在でも、アルネとデビーは夫婦として暮らしています。

 

アルネの当時の恋人デビーには実は2人の弟がおり、もう一人の弟カールはのちに「ウォーレン夫妻は、デヴィッドの精神状態(デヴィッドは当時統合失調症だったのではとも言われています。)を利用してお金儲けに使った。家族の不幸を利用して搾取した。」と主張。

実際、悪魔払いを受けたデヴィッドはメディアに追い回され、家族の評判に影響も大きな影響が出ていたそう。

 

現在デヴィッドは、建設会社を経営。

幼少時代は精神疾患に苦しんでおり、特に1979〜82年には状況が悪化していたそう。

 

デヴィッドとカールは、2007年にウォーレン夫妻、ジェラルド・ブリットル、出版社を訴えました。(本の再出版を受けて)

家族は、この収益でアルネを刑務所から出すことができると説得されており、実際にアルネと出版側は1億円以上の報酬を得ました。

著者のブリットルによると、本は100時間にのぼるブリットル家のインタビューで構成されており、本の成功を受けて一家も報酬を得ていましたが、その額はたった2000ドル(約20万円)。これじゃ納得いかないのわかる…

この裁判は2021年時点でまだ決着がついていないよう…

 

アルネとデビー夫婦は、今でもウォレン夫妻の言い分をサポートしています。

(そりゃそうだよな)

 

まとめ

この事件について、時代背景(悪魔ブーム&ウォーレン夫妻の活躍が認められ始めた時期)がわかるとこれが本当に悪魔憑依だったのか、弁護士とウォーレン夫妻の思いつきだったのか、少し疑問あり。

弁護士は若くて野心にあふれていただろうから、この事件でキャリアをブーストしてやろうくらいに思っていたんじゃないかと。

 

もし、仮に、アルネが故意に殺人を犯していなかったとしても…服役5年は短過ぎると思う。

この映画でもそうだけど、被害者アラン・ボーノについてはほとんどフォーカスされず、殺人犯アルネがひたすら「いい人」みたいな立ち位置なのにはちょっと疑問あり。

 

この事件、本や映画、メディアの注目で得をしたのはアルネとウォーレン夫妻。

お互いの立場を守ために都合の良いパートナーだったのかもしれないけど、せめて被害者にも印税とか渡ってて欲しいなぁ。どうなんでしょ。

 

映画としては面白かった。

最後はびっくりするどんでん返しで怖かったー。カメラワークもハラハラドキドキで大満足!

ウォーレン夫妻の中の良さと絆を感じるストーリーも良かった。

アルネ以外の、二人の女性の死は(一部)実話だけど、悪魔崇拝の女性についてはフィクションらしいです。

 

ホラー苦手だけど、死霊館シリーズは今後も見ちゃうだろうなー。